取引先からPL保険の証明書を求められたら|英文の付保証明書(COI)で確認される項目と、間に合わせる手順

海外の取引先や販売店から、「PL保険の証明書を出してください」「Certificate of Insurance を送ってください」と言われることがあります。新しい取引の開始、契約の更新、大手の小売店への納入、海外のECサイトへの出品など、きっかけはさまざまです。

ところが、いつもの保険証券の写しや、その英訳を送っても、受け取ってもらえないことが少なくありません。相手が確かめたいのは「保険に入っているか」だけでなく、「自分たちが求める条件を満たしているか」だからです。

この記事では、PL保険の証明書で確認される項目と、求められたときに間に合わせるための手順を解説します。

要点は3つです。

  1. 証明書は、保険に入っていることと、相手の条件を満たしていることを示す書類です。日本語の証券の写しや和訳では、相手の確認欄が埋まらないことがあります。
  2. 確認されるのは、保険の種類、支払限度額、保険期間、対象の地域と製品、守られる人(被保険者)などです。とくに「相手を守る人に加えること」が求められると、特約の手配が必要になります。
  3. 依頼が来たら、相手の要求文と今の証券を並べて、足りないところを先に見つけてください。手配の順番を間違えなければ、間に合う可能性は高くなります。

1. どんな場面で求められるか

PL保険の証明書は、次のような場面で求められます。

販売代理店・輸入者との契約

海外の販売代理店や輸入者と契約するとき、契約書に「PL保険(または賠償責任保険)に加入し、その証明書を提出すること」と書かれていることがよくあります。代理店や輸入者は、売った製品で事故が起きれば自分たちも訴えられうるため、作った会社の保険を確認したいのです。

海外の小売店・量販店への納入

大手の小売店に納入する場合、取引先として登録する段階で、保険の証明書の提出を求められることがあります。限度額や守られる人の条件が、細かく決められていることもあります。

海外のECサイトへの出品

海外のECサイトでは、売上などの条件によって、出品者に賠償責任保険への加入と証明を求める仕組みがあります。条件は変わることがあるため、利用しているサイトの最新の規約を確認してください。

部品やOEMの供給

海外のメーカーに部品を納める、あるいはOEMで製品を供給する場合も、取引先から保険の証明を求められることがあります。完成品で事故が起きたとき、原因が部品にあれば、部品を納めた会社に請求が来ることがあるからです。

契約の更新

一度提出しても終わりではありません。保険は1年ごとに更新されるため、取引先からは更新のたびに新しい証明書を求められることがあります。

2. 証明書で確認される項目

証明書(COI)には、相手が確かめたい項目が決まった形で並びます。主なものは次のとおりです。

項目 英語での書き方の例 相手が確かめたいこと
保険の種類 Products Liability/Commercial General Liability 製品の事故の賠償を補償する保険か
支払限度額 Each Occurrence/Products-Completed Operations Aggregate 1事故あたり・期間中の合計が、求める額に届いているか
保険期間 Policy Period(Effective/Expiration) 取引の期間をカバーしているか、切れていないか
対象の地域 Territory 相手の国(とくにアメリカ・カナダ)での事故が対象か
対象の製品 Products/Description of Operations 取引する製品が補償の対象に入っているか
保険に入っている会社 Named Insured 契約の相手と同じ会社か(正式な英文の社名)
相手を守る人に加えること Additional Insured 取引先自身も、その保険で守られるか
証明書の宛先 Certificate Holder 証明書を受け取る会社(宛先)

このうち、相手の要求文で特に細かく指定されやすいのが、支払限度額、対象の地域、そして Additional Insured です。用語の意味は「Additional Insured・Waiver of Subrogationとは|英文COIの要求文に出る用語集」で一つずつ解説しています。

3. 日本語の証券を英訳するだけでは足りない理由

「今の保険証券を英語に訳して送ればよいのでは」と考える方は多いのですが、それだけでは足りないことがあります。理由は3つです。

相手が見る欄が、日本の証券にはない

証明書の宛先(Certificate Holder)や、相手を守る人に加えること(Additional Insured)は、日本の一般的な保険証券には対応する欄がありません。訳しても、相手の確認欄は埋まりません。

補償の中身が、相手の条件を満たしていない

国内のPL保険は、日本国内での事故を前提にしていることが多く、海外の事故や、海外で起こされた裁判が対象外になっていることがあります。相手の国が対象に入っていなければ、訳しても条件は満たせません。

相手を守る人に加えるには、特約が要る

Additional Insured は、証明書に相手の名前を書けばよいのではなく、保険会社が特約で「この会社も守ります」と加えて初めて成り立ちます。名前を書くだけなら、それはただの宛先です。

4. どの保険で証明書を出すか

証明書を出す元になる保険は、主に3つです。どれが合うかは、相手の要求文と、輸出の形で決まります。

保険 向いている場面 注意すること
国内PL保険の海外特約 輸出が少なく、行き先も限られている 対象の地域や海外の裁判の扱いが限られていることがある。英文の証明書を出せるか、相手の条件を満たせるかを確認する
海外PL保険 輸出の売上が毎年ある。取引先から製品の賠償の補償を求められている 相手が「CGL」という形を指定している場合は、それで足りるかを要求文で確認する
英文CGL 相手が「Commercial General Liability」を指定している。展示会や現地での作業もある 製品だけでなく、事業全体の賠償を見る。要求文の項目に合わせて設計する

それぞれの違いは「海外PL保険とは|補償範囲・国内PLの海外特約との違い・輸出形態別の選び方」と「CGL保険とは?英文CGL完全ガイド」で詳しく解説しています。アメリカ向けの場合は「アメリカに輸出する製品のPL保険|訴えられる範囲・取引先の保険条件・準備の順番」もあわせてご覧ください。

5. 販売店を守る「Vendors」の特約

海外の小売店や販売代理店からは、「Additional Insured – Vendors」という形で、売った店を守るよう求められることがあります。

販売店は製品を作っていませんが、事故が起きれば、売った立場として訴えられることがあります。そこで、作った会社の保険で、販売店も守られるようにしてほしい、というのがこの特約の考え方です。

この特約を付けられるかどうか、どの範囲まで守れるかは、保険会社と商品によって違います。要求文に「Vendors」と書かれていたら、早めに相談してください。後から付けるには、保険の契約を変える手続きが要ります。

6. 期限に間に合わせる手順

証明書を求められたら、次の順番で進めてください。

  1. 相手の要求文の全文をそろえる。契約書の保険の条項、取引先登録の案内、出品の規約など、英文のままで構いません
  2. 今の保険証券(特約を含む)を手元に用意する
  3. 要求文と証券を並べて、足りないところを洗い出す。保険の種類、限度額、地域、製品、Additional Insured の5つを順に見る
  4. 足りない部分を、特約の追加か、別の保険の手配で埋める
  5. 証明書を作り、相手に提出する。差し戻されたら、文面をそのまま転送してもらい、どこを直すかを確認する
  6. 更新の時期を管理し、更新のたびに新しい証明書を出す

時間がかかりやすいのは、3つ目と4つ目です。保険会社に引き受けを判断してもらう必要があるため、要求文が届いた時点で動き始めることが大切です。提出期限がすでに迫っている場合は、まずお電話ください。

7. 提出した後に気をつけること

宛先や Additional Insured を後から変えるとき

提出後に「宛先を変えてほしい」「Additional Insured に別の会社も加えてほしい」と言われることがあります。証明書の書き直しだけでは済まず、保険の契約を変える手続きが必要になることがあります。

取引先の正式な英文名称

Additional Insured や宛先には、取引先の正式な英文の会社名が必要です。略称や日本語の名前では差し戻されることがあるため、契約書に書かれた表記をそのまま使ってください。

保険期間の切れ目

証明書には保険期間が書かれています。更新の手続きが遅れて切れ目ができると、取引先から取引を止められることもあります。更新の時期は、早めに管理してください。

8. よくあるご質問

Q. 日本語の保険証券を英訳して送るだけではだめですか。
A. 足りないことが多いです。相手が確認する宛先や Additional Insured の欄が日本の証券にはなく、補償の地域が相手の国を含んでいないこともあります。要求文と証券を並べて確認します。

Q. 取引先を Additional Insured に入れるのは、名前を書けば済みますか。
A. 済みません。保険会社が特約で取引先を守る人に加えて、初めて成り立ちます。名前を書くだけなら、証明書の宛先の扱いです。

Q. PL保険を求められましたが、CGLでも大丈夫ですか。
A. 多くの場合は対応できますが、要求文の書き方によります。相手が求める保険の種類と項目を確認したうえで、どの保険で証明書を出すかを決めます。

Q. 証明書は一度出せば終わりですか。
A. 保険は1年ごとに更新されるため、更新のたびに新しい証明書を求められることがあります。更新の時期を管理しておくと、取引を止められる心配が減ります。

Q. 提出期限が迫っています。間に合いますか。
A. 要求文と今の証券の内容によります。足りない部分が少なければ早く進められることもあります。期限が迫っている場合は、まずお電話ください。

9. ご相談と関連ページ

取引先からの要求文(英文のまま)、今の保険証券、取引する製品と輸出先、提出期限を gbic@beam-rm.jp へお送りください。満たせている条件と、手当てが要る条件を整理してお返しします。

関連ページ

  • このブログの記事は「若宮大志」が書きました。

    若宮大志

    平素、ご契約者様には弊社にて保険契約を賜り、誠にありがとうございます。また取引業者様におかれましても、弊社の業務運営において日頃多大なご支援をいただき感謝を申し上げます。

     さて昨今の大きな問題として、自然災害の増加、資源・物価高による保険金の増大、保険金の不正請求等にもより、お客様にお支払いいただく保険料の上昇が顕著となった1年間でした。また損保大手4社による企業カルテル問題では、大きなところでは政策保有株の原則禁止と表明されたり、小さな部分では他社証券の取得や満期更改情報の取得を制限すると表明されたりしましたが、実質的に保険業界の企業体質はなかなか変わらないことが危惧されます。また保険会社の営業職員や保険代理店社員がお客様の保険料を不正に流用したり、店主が顧客と結託し、保険金詐欺に加担していた事件も明るみとなりました。

     国も企業も、身を正すことができない大人たちが跋扈することによって、業界が成長しないばかりか市場における競争力が失われ続けていると感じます。それは国内のみならまだしも、グローバルで相対的に力を失っているのが一番大きな弊害だと感じるものです。

     私たち株式会社BEAMリスクマネージは、政府による指導や保険会社の改革を待つのではなく、高いレベルのコンプライアンス基準による業務遂行を通じ、日本を、世界をリードする最先端の保険コンサルティング会社を目指してまいります。引き続きのご指導、ご鞭撻のほど何卒宜しくお願い申し上げます。


    2024年12月吉日
    株式会社BEAMリスクマネージ
    代表取締役 若宮 大志

     

    プロフィール

    若宮 大志(わかみや たいし)
    株式会社BEAMリスクマネージ 代表取締役
    海外ビジネス保険センター(GBIC東京)責任者

    保険業界での実務経験は13年。うち8年を海外ビジネス保険に専従しています。

    AIG損害保険株式会社に在籍したのち、2020年5月に株式会社BEAMリスクマネージを設立。同年8月にAIG損害保険を退職し、独立しました。

    国内の法人保険を手がける中で、海外に事業を広げようとする中小企業が「英文の証券が用意できない」「主催者から届いた英文の要求が読み解けない」という理由で、商談や出展を止めてしまう場面に何度も立ち会いました。保険が事業の足かせになっている——この状況を変えたいと考え、海外ビジネス保険に専門特化しています。

    現在も、AIG損害保険をはじめChubb損害保険、スター保険会社など、海外リスクの引受に強い保険会社を取り扱っています。

    専門領域

    • 海外展示会保険(主催者指定要件への対応、英文付保証明書の発行)
    • 英文CGL・PL保険(海外での賠償責任)
    • 外航貨物海上保険(輸出入貨物の輸送中・保管中)
    • 貿易保険
    • 取引信用保険(海外売掛債権の未回収リスク)
    • 海外リコール保険
    • 海外拠点を含むサイバー保険
    • グローバル保険プログラム(海外子会社を含む保険の一元管理)

    取扱保険会社:AIG損害保険、Chubb損害保険、スター保険会社

    保有資格

    • 損害保険トータルプランナー(日本損害保険協会)
    • 貿易実務検定

    対応実績

    独立以来の累計で、次の実績があります。

    • 海外展開を支援した企業(累計) …… 約150社
    • 海外展示会の保険手配(累計) …… 約180件
    • 対応した国・地域 …… 22カ国

    海外展示会の保険手配では、主催者が求める補償項目・補償限度額・追加被保険者(Additional Insured)の記載要件を確認したうえで保険を設計し、英文付保証明書(COI)を発行しています。

    英語対応

    英文証券および英文付保証明書(COI)の発行に対応しています。

    主催者から届く英文の出展要項を読み解き、「Commercial General Liability USD 1,000,000」「Additional Insured」「Waiver of Subrogation」といった要求条件が日本のどの保険に対応するのかを確認したうえで手配します。

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