海外取引の保険|代金未回収・貨物の事故・製品事故に備える4つの保険と選び方

最終更新:2026年10月31日

海外の企業と取引を始めると、国内取引にはなかった心配が出てきます。代金は本当に支払われるのか。船で運ぶ途中に貨物が壊れたら誰が負担するのか。輸出した製品で現地の人がけがをしたら、日本の会社が訴えられるのか。

こうした心配には、それぞれ別の保険が対応しています。ひとつの保険で全部をまかなうことはできません。この記事では、海外取引のリスクを3つに分け、それぞれに使う保険の違いと、取引の形に合わせた選び方を整理します。

1. 海外取引のリスクは3つに分けて考える

海外取引で企業が負うリスクは、大きく次の3つです。

  1. 代金のリスク:取引先の倒産や支払い遅延、相手国の送金規制や戦争などで、代金が回収できない
  2. 貨物のリスク:輸送中や積み替え中に、貨物が壊れる・濡れる・なくなる
  3. 製品のリスク:輸出した製品が原因で、海外の第三者にけがをさせたり物を壊したりして、賠償を求められる

保険を考えるときは「どのリスクに備えたいのか」を先に決めます。リスクの種類がずれたまま保険を選ぶと、いざというときに「その事故は対象外です」となります。

2. 代金のリスクに備える保険|貿易保険と輸出取引信用保険

貿易保険

相手国の戦争・内乱・送金停止・輸入禁止といった「非常危険」と、取引先の倒産や支払い不能といった「信用危険」の両方を対象にできる保険です。政府系の機関が引き受けており、民間の保険では引き受けにくい国の事情による損失まで備えられるのが特徴です。輸出だけでなく、海外への投資や融資を対象にした種類もあります。

貿易保険は、輸出者が引受機関に直接申し込む形が基本です。当センターでは手配は行っていませんが、民間の保険とどう組み合わせるかのご相談には応じます。

輸出取引信用保険

取引先の倒産や、一定期間を超える支払い遅延による売掛金の損失を補償する、民間の損害保険会社の保険です。国の事情よりも「取引先そのものの信用」に焦点を当てた保険で、複数の取引先をまとめて対象にする形もあります。

取引先ごとに支払限度額(いくらまで補償するか)が設定されるため、取引先の信用情報の確認とセットで手配します。

どちらを選ぶか

  • 新興国との取引で、相手国の政治や送金規制が心配 → 貿易保険を軸に検討
  • 取引先が複数あり、取引先の倒産や支払い遅れが心配 → 輸出取引信用保険を軸に検討
  • 前払いや信用状(L/C)で決済している → 代金のリスクは小さく、保険が要らない場合もある

決済条件によって必要性が大きく変わるため、まず決済条件を確認するところから始めます。

3. 貨物のリスクに備える保険|外航貨物海上保険

外航貨物海上保険とは

海上輸送や航空輸送の途中で、貨物が破損・水濡れ・盗難などの損害を受けたときに補償する保険です。名前に「海上」とありますが、航空輸送や、港までの陸上輸送の区間も対象にできます。

補償の範囲は、国際的に使われている保険条件(協会貨物約款)で決まります。補償範囲が広い条件から、沈没・座礁などの大きな事故に限る条件まであり、貨物の性質に合わせて選びます。

誰が保険をかけるかは、貿易条件で決まる

輸出と輸入のどちらの側が保険を手配するかは、取引の契約で決めた貿易条件(インコタームズ)で変わります。

  • CIF・CIP:売り手(輸出者)が保険を手配する
  • FOB・CFR・FCAなど:買い手(輸入者)が手配するのが一般的

「保険は相手がかけていると思っていた」という行き違いは、貨物事故のあとに発覚することが多い問題です。契約時に、どちらが・どの条件で保険をかけるかを確認しておきます。

継続して輸出入する会社は年間契約で

貨物海上保険には、1回の輸送ごとにかける方法と、1年間の輸出入をまとめて対象にする包括契約があります。継続して取引する会社は、かけ忘れを防げる包括契約が向いています。

当センターでは、年間を通じた海外ビジネスのリスク設計をお手伝いしています。1回きりの輸送のみのご手配は承っておりません。海外展示会への出展、継続的な輸出入のご相談をお待ちしています。

4. 製品のリスクに備える保険|海外PL保険と取引先からの要求

海外PL保険

輸出した製品や海外で販売された製品が原因で、海外の第三者にけがをさせたり物を壊したりして、法律上の賠償責任を負ったときに補償する保険です。

国内のPL保険は、原則として日本国内で起きた事故が対象です。輸出した製品の事故は、国内のPL保険では補償されないのが基本です。特に北米向けの輸出では、賠償額が高額になりやすく、弁護士費用などの訴訟費用も大きくなります。支払限度額の決め方と、訴訟費用がどう扱われるかが重要です。

→ 海外PL保険の見積・加入|輸出製品の賠償責任と取引先への保険証明

取引先から「保険に入っていること」を求められたら

海外の取引先や販売代理店から、保険に入っている証明(保険証明書、COI)や、取引先を追加被保険者にすることを求められることがあります。要求される内容(支払限度額、追加被保険者、通知条項など)によっては、加入している保険のままでは応えられない場合があります。要求文を受け取った段階で、保険で応えられるかを確認します。

→ 英文付保証明書(COI)発行/英文CGL保険

契約で引き受ける賠償責任に注意

海外の取引契約には、「製品に関する一切の請求について、輸出者が買い手を補償する」といった条項(補償条項)が入っていることがよくあります。保険が補償するのは、原則として法律上の賠償責任です。契約で自ら引き受けた責任まで保険で補償されるとは限りません。契約で引き受ける責任を保険でどこまで受けられるかは引受けの判断が難しく、時間もかかります。

契約書にサインする前に、補償条項と保険の範囲を照らし合わせておくことが、海外取引を止めないための近道です。

→ 海外取引を早く前に進めるために|契約で引き受ける賠償責任(Contractual Liability)の引受け

5. 取引の形で見る、必要な保険の組み合わせ

  • 商社を通して輸出する:代金のリスクは商社が負うことが多い。製品の事故は自社に請求が来る可能性があり、海外PL保険を検討
  • 自社で直接輸出する:代金(輸出取引信用保険、必要に応じて貿易保険)、貨物(外航貨物海上保険、貿易条件による)、製品(海外PL保険)の3つすべてを確認
  • 海外に販売代理店を置く:海外PL保険に加え、代理店を追加被保険者にできるか、保険証明を出せるかを確認
  • 海外に現地法人をつくる:現地法人の保険は、原則として現地で手配する必要があります(付保規制)。日本の本社側の保険とあわせて設計します

→ 海外進出の保険|輸出・展示会・現地法人で変わる必要補償

6. よくあるご質問

Q. 海外取引の保険は、ひとつにまとめられますか。

A. 代金・貨物・製品のリスクはそれぞれ別の保険が対応します。ひとつの保険で全部をまかなうことはできません。ただし、窓口をひとつにまとめて、取引全体を見たうえで設計することはできます。

Q. 貿易保険の手配もお願いできますか。

A. 貿易保険は輸出者が引受機関に直接申し込む形が基本で、当センターでは手配を行っていません。輸出取引信用保険など民間の保険との使い分けや組み合わせについては、ご相談に応じます。

Q. 輸入する側でも保険は必要ですか。

A. 貿易条件によっては、輸入する側が貨物海上保険を手配します。また、輸入した製品を国内で販売して事故が起きた場合、輸入者が製造業者と同じ責任を負うことがあります。国内のPL保険の対象になっているかも確認してください。

Q. 取引先から保険の加入を求められています。何から始めればよいですか。

A. 取引先から届いた要求文(英文のままで構いません)をご用意ください。必要な補償、支払限度額、追加被保険者などの条件を読み解き、手配できる形をご提案します。

7. まとめ

海外取引の保険は、「代金」「貨物」「製品」のどのリスクに備えるかで選びます。決済条件と貿易条件を確認し、取引の形に合わせて必要な保険を組み合わせることが大切です。

海外ビジネス保険センター(GBIC東京)では、海外PL保険、英文CGL、外航貨物海上保険、輸出取引信用保険まで、海外取引の保険をまとめてご相談いただけます。

→ ご相談・お見積りはこちら

  • このブログの記事は「若宮大志」が書きました。

    若宮大志

    平素、ご契約者様には弊社にて保険契約を賜り、誠にありがとうございます。また取引業者様におかれましても、弊社の業務運営において日頃多大なご支援をいただき感謝を申し上げます。

     さて昨今の大きな問題として、自然災害の増加、資源・物価高による保険金の増大、保険金の不正請求等にもより、お客様にお支払いいただく保険料の上昇が顕著となった1年間でした。また損保大手4社による企業カルテル問題では、大きなところでは政策保有株の原則禁止と表明されたり、小さな部分では他社証券の取得や満期更改情報の取得を制限すると表明されたりしましたが、実質的に保険業界の企業体質はなかなか変わらないことが危惧されます。また保険会社の営業職員や保険代理店社員がお客様の保険料を不正に流用したり、店主が顧客と結託し、保険金詐欺に加担していた事件も明るみとなりました。

     国も企業も、身を正すことができない大人たちが跋扈することによって、業界が成長しないばかりか市場における競争力が失われ続けていると感じます。それは国内のみならまだしも、グローバルで相対的に力を失っているのが一番大きな弊害だと感じるものです。

     私たち株式会社BEAMリスクマネージは、政府による指導や保険会社の改革を待つのではなく、高いレベルのコンプライアンス基準による業務遂行を通じ、日本を、世界をリードする最先端の保険コンサルティング会社を目指してまいります。引き続きのご指導、ご鞭撻のほど何卒宜しくお願い申し上げます。


    2024年12月吉日
    株式会社BEAMリスクマネージ
    代表取締役 若宮 大志

     

    プロフィール

    若宮 大志(わかみや たいし)
    株式会社BEAMリスクマネージ 代表取締役
    海外ビジネス保険センター(GBIC東京)責任者

    保険業界での実務経験は13年。うち8年を海外ビジネス保険に専従しています。

    AIG損害保険株式会社に在籍したのち、2020年5月に株式会社BEAMリスクマネージを設立。同年8月にAIG損害保険を退職し、独立しました。

    国内の法人保険を手がける中で、海外に事業を広げようとする中小企業が「英文の証券が用意できない」「主催者から届いた英文の要求が読み解けない」という理由で、商談や出展を止めてしまう場面に何度も立ち会いました。保険が事業の足かせになっている——この状況を変えたいと考え、海外ビジネス保険に専門特化しています。

    現在も、AIG損害保険をはじめChubb損害保険、スター保険会社など、海外リスクの引受に強い保険会社を取り扱っています。

    専門領域

    • 海外展示会保険(主催者指定要件への対応、英文付保証明書の発行)
    • 英文CGL・PL保険(海外での賠償責任)
    • 外航貨物海上保険(輸出入貨物の輸送中・保管中)
    • 貿易保険
    • 取引信用保険(海外売掛債権の未回収リスク)
    • 海外リコール保険
    • 海外拠点を含むサイバー保険
    • グローバル保険プログラム(海外子会社を含む保険の一元管理)

    取扱保険会社:AIG損害保険、Chubb損害保険、スター保険会社

    保有資格

    • 損害保険トータルプランナー(日本損害保険協会)
    • 貿易実務検定

    対応実績

    独立以来の累計で、次の実績があります。

    • 海外展開を支援した企業(累計) …… 約150社
    • 海外展示会の保険手配(累計) …… 約180件
    • 対応した国・地域 …… 22カ国

    海外展示会の保険手配では、主催者が求める補償項目・補償限度額・追加被保険者(Additional Insured)の記載要件を確認したうえで保険を設計し、英文付保証明書(COI)を発行しています。

    英語対応

    英文証券および英文付保証明書(COI)の発行に対応しています。

    主催者から届く英文の出展要項を読み解き、「Commercial General Liability USD 1,000,000」「Additional Insured」「Waiver of Subrogation」といった要求条件が日本のどの保険に対応するのかを確認したうえで手配します。

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