海外PL保険は「書かれた製品」だけを守る|補償の範囲を決める証券の書き方と、書き漏れを防ぐ工夫

最終更新:2026年11月3日

海外PL保険は、保険証券に「対象製品」として書かれた製品の事故だけを補償します。保険料を払っていても、事故を起こした製品が証券の記載から外れていれば、保険金は出ません。

裏を返せば、対象製品の書き方を工夫すれば、同じ保険でも守れる範囲を広げられます。決まった書式に製品名を入れるだけの欄に見えますが、ここは補償の範囲そのものを決める、契約でいちばん大事な欄の一つです。

要点は3つです。

  • 証券の対象製品の欄に書かれていない製品は、補償の対象にならない
  • だから書き方の工夫が要る。型番を並べるより製品群と用途でまとめ、部品・付属品・仕入れ品・OEM品を明示する
  • 取引先に出す保険証明(COI)も、証券の書き方とそろえる。宛先(Certificate Holder)の取り違えに注意する

この記事では、海外PL保険の証券で対象製品がどう決まるかと、書き漏れを防ぐ書き方の工夫を、実務の順番で整理します。海外PL保険の全体像は「海外PL保険とは」をご覧ください。

1. 海外PL保険は「書かれた製品」だけを守る。だから書き方の工夫が大事です

対象になるのは、証券に書かれた製品の事故だけ

海外PL保険では、契約のときに「どの製品の事故を補償するか」を決め、それを証券(または証券に付く明細)に書きます。補償の対象になるのは、ここに書かれた製品が原因の事故です。

自動車保険が「この車」を、火災保険が「この建物」を対象に決めるのと同じで、PL保険は「この製品」を対象に決めます。会社として加入していても、会社が扱うすべての製品が自動的に対象になるわけではありません。

事故が起きたときに最初に確認されるのは「事故を起こした製品が、証券の対象製品に含まれているか」です。ここで外れると、事故の内容や過失の有無を検討する前に、補償の対象外になります。

書き方ひとつで、守れる範囲が変わる

同じ製品を扱う会社でも、対象製品の書き方によって、守られる範囲は大きく変わります。

たとえば、ある装置を海外に出している会社で、対象製品を次のように書いた場合を比べます。

  • 型番を並べた書き方:「装置A-100、A-200」
  • まとめて書いた書き方:「〇〇用の△△装置およびその部品・付属品」

前者は、後から出したA-300や、単体で出荷した交換部品、一緒に出荷したケーブルの事故が、記載から外れます。後者なら、同じ用途の装置であれば新しい型番も、部品や付属品も含められます。

保険料や限度額が同じでも、書き方の工夫で、事故のときに出るか出ないかが分かれます。契約の前に、対象製品の欄をどう書くかを時間をかけて詰める理由はここにあります。

どこまで書けるかは、保険会社との詰め方で変わる

どこまでまとめて書けるかは、製品の種類や事故の起きやすさを見て保険会社が判断します。同じ製品でも、製品の説明の仕方や、取引の実態の示し方で、通る書き方は変わります。ここには決まった型がなく、扱う代理店の経験で差が出るところです。

2. 書き漏れが起きやすい6つの製品

ご相談を受けて既存の証券を拝見すると、次のような製品が対象製品の欄から抜けていることがあります。

① 契約後に出した新製品・派生モデル
契約時の製品名や型番で書いていると、後から出した新製品や型番違いの派生モデルが含まれません。毎年の更新で書き足すつもりが、そのままになっている例が目立ちます。

② 部品・補修部品・消耗品
完成品だけを書いていると、単体で出荷している交換部品や補修部品、消耗品が外れることがあります。海外の販売店が部品を在庫して現地で交換する形では、部品単体の事故も起こりえます。

③ 付属品
充電器、取付金具、ケーブルなど、製品と一緒に出荷する付属品です。事故の原因が本体ではなく付属品だったとき、付属品が対象に含まれているかが問題になります。

④ 他社から仕入れて販売している製品
自社で製造せず、仕入れて自社の製品と一緒に販売しているものです。「製造している製品」とだけ書いていると、仕入れ品は含まれません。販売者としての責任を問われる国では、仕入れ品の事故も自社への請求につながります。

⑤ 他社ブランドで出している製品(OEM)
相手先のブランドで製造している製品です。自社の名前が製品に出ていなくても、作ったのが自社であれば責任を問われることがあります。自社ブランド品だけを書いていると、OEM品が外れます。

⑥ すでに販売を終えた製品
販売を終えた製品でも、海外の市場や使用者の手元には残っています。対象製品から外してしまうと、過去に出荷した製品の事故が補償されなくなることがあります。

3. 書き漏れを防ぐ書き方の工夫

型番の列挙ではなく、製品群と用途でまとめる

型番を一つずつ並べる書き方は、正確に見えて漏れが出やすい方法です。製品が増えるたびに書き足しが必要になり、一つ忘れればその製品は対象外になります。保険会社が認める範囲で、製品群と用途でまとめて書けるかを先に検討します。

用途は狭くしすぎない

用途を細かく書きすぎると、想定していない使い方をされたときの事故が、記載の範囲から外れるかどうかで争いになることがあります。製品が実際に使われている場面を確認し、それが収まる書き方にします。

部品・付属品・仕入れ品・OEM品は、記載の中で明示する

2章の②〜⑤は、完成品の名前だけでは含まれないことがあります。「部品・付属品を含む」「自社が販売する他社製品を含む」「他社ブランドで製造する製品を含む」のように、記載の中で明示しておきます。

売上の申告と対象製品をそろえる

海外PL保険の保険料は、多くの場合、対象製品の売上をもとに決まります。売上として申告している製品と、証券の対象製品が食い違っていると、事故のときに説明がつかなくなります。対象製品の記載と、申告する売上の範囲は同じものにそろえます。

新製品・変更は、更新を待たずに知らせる

新製品の発売、新しい輸出先、製品の大きな仕様変更があったときは、更新を待たずに保険会社へ知らせ、対象製品に加えます。知らせる前に起きた事故は対象にならないことがあります。

加入前に出荷した製品の扱いを決めておく

加入前にすでに海外へ出荷した製品は、契約のときに申告し、保険会社が認めれば対象に含められる場合があります。過去の出荷分が市場に残っている場合は、契約の前に扱いを決めておきます。

4. 英文の証券と、取引先に出す保険証明(COI)

海外の取引先や販売店から、保険に入っていることの証明(COI:Certificate of Insurance)を求められることがあります。COIには、対象になる製品や事業の内容が書かれます。

証券の対象製品とCOIの記載をそろえる

証券の対象製品とCOIの記載は、食い違わせないようにします。取引先が扱う製品がCOIの記載に含まれていないと、取引先から「この製品は対象外ではないか」と差し戻されることがあります。逆に、COIに書いた内容が証券の記載より広いと、実際の補償とずれた証明を出すことになります。

英文の証券での対象製品の書き方には、決まった型がありません。取引先の要求文、製品の使われ方、保険会社の引受けの条件を見ながら組み立てるところで、扱う代理店の経験で差が出ます。

よくある取り違え:Certificate Holder は「自社」ではありません

COIでよく起きるのが、Certificate Holder(証明書の宛先)の取り違えです。

Certificate Holder は、証明書を受け取る相手、つまり保険の証明を求めてきた取引先や販売店のことです。ところが、日本の保険の実務では、Certificate Holder の欄に保険契約者(自社)の名前を入れた証明書が出てくることがあります。

この形の証明書を出すと、取引先からは「宛先が違う」「当社あての証明になっていない」として差し戻されます。取引先によっては、証明書が受け付けられるまで出荷や取引の開始を止めることもあります。

Certificate Holder には、要求文に書かれた取引先の名称と住所を、そのとおりに入れます。取引先が現地法人やグループ会社の名前で指定してくる場合もあるため、要求文の原文で確認します。Additional Insured(追加被保険者)として取引先を入れるよう求められている場合は、Certificate Holder とは別の欄・別の手続きになる点にも注意が要ります。

COIで確認される項目は「取引先からPL保険の証明書を求められたら」で、要求文に出る用語は「Additional Insured・Waiver of Subrogationとは」で解説しています。

5. いまの証券を確認する手順

すでに海外PL保険に入っている場合は、次の順で確認します。

  1. 証券(明細)の対象製品の欄を、そのまま書き写す
  2. 自社が海外に出している製品をすべて並べる(新製品、部品・補修部品、付属品、仕入れ品、OEM品、販売を終えた製品を含む)
  3. 2のうち、1の記載に含まれないものに印を付ける
  4. 印の付いた製品の売上が、保険料の申告に入っているかを確認する
  5. 取引先に出しているCOIの記載と、1の記載を見比べる。Certificate Holder に取引先の名称が入っているかも確認する

3で印が付いた製品があれば、事故が起きたときに補償されない可能性があります。更新を待たずに、書き方の見直しを相談してください。

6. よくある質問

Q. 会社として加入していれば、扱う製品はすべて対象になりますか?
A. なりません。海外PL保険は、証券に対象として書かれた製品の事故を補償します。会社が扱う製品のうち、記載に含まれないものは対象外です。

Q. 型番を全部書いておけば安心ですか?
A. 書いた時点では正確でも、新製品や派生モデルが出るたびに書き足しが必要になります。製品群と用途でまとめて書けるかを先に検討します。

Q. 部品を単体で出荷しています。完成品の記載に含まれますか?
A. 含まれないことがあります。部品・補修部品を単体で出荷している場合は、記載の中で明示します。

Q. 他社ブランドで作っている製品も対象にできますか?
A. できます。ただし、自社ブランド品だけを書いていると外れます。記載の中で明示が必要です。

Q. COIの Certificate Holder には誰の名前を入れますか?
A. 証明書を求めてきた取引先の名前です。自社(保険契約者)の名前を入れると、宛先違いとして差し戻されます。

Q. 取引先からCOIを求められています。証券の記載と関係がありますか?
A. あります。COIの記載は証券の内容を証明するものなので、取引先が扱う製品が証券の対象製品に含まれている必要があります。

7. お問い合わせ

いまの証券の対象製品の欄で足りているか分からない、取引先からCOIを求められているがどう書けばよいか分からない、差し戻された証明書を直したい、という段階からご相談いただけます。証券の写しと、海外に出している製品の一覧、取引先の要求文をお送りいただければ、書き方の過不足を確認します。

海外PL保険のお手配は「海外PL保険|輸出製品の賠償責任に備える見積・加入と取引先への保険証明」のページで承っています。

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海外ビジネス保険センター(GBIC東京)
TEL:03-4218-6981(平日 9:30〜18:00)
Email:gbic@beam-rm.jp

※本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。実際の補償内容は、保険会社の約款および個別の契約条件によります。

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  • このブログの記事は「若宮大志」が書きました。

    若宮大志

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     国も企業も、身を正すことができない大人たちが跋扈することによって、業界が成長しないばかりか市場における競争力が失われ続けていると感じます。それは国内のみならまだしも、グローバルで相対的に力を失っているのが一番大きな弊害だと感じるものです。

     私たち株式会社BEAMリスクマネージは、政府による指導や保険会社の改革を待つのではなく、高いレベルのコンプライアンス基準による業務遂行を通じ、日本を、世界をリードする最先端の保険コンサルティング会社を目指してまいります。引き続きのご指導、ご鞭撻のほど何卒宜しくお願い申し上げます。


    2024年12月吉日
    株式会社BEAMリスクマネージ
    代表取締役 若宮 大志

     

    プロフィール

    若宮 大志(わかみや たいし)
    株式会社BEAMリスクマネージ 代表取締役
    海外ビジネス保険センター(GBIC東京)責任者

    外資系保険会社勤務10年超を経て独立し、海外ビジネス保険を専門に扱っています。

    AIG損害保険株式会社に在籍したのち、2020年5月に株式会社BEAMリスクマネージを設立。同年8月にAIG損害保険を退職し、独立しました。

    国内の法人保険を手がける中で、海外に事業を広げようとする中小企業が「英文の証券が用意できない」「主催者から届いた英文の要求が読み解けない」という理由で、商談や出展を止めてしまう場面に何度も立ち会いました。保険が事業の足かせになっている——この状況を変えたいと考え、海外ビジネス保険に専門特化しています。

    現在も、AIG損害保険をはじめChubb損害保険、スター保険会社など、海外リスクの引受に強い保険会社を取り扱っています。

    専門領域

    • 海外展示会保険(主催者指定要件への対応、英文付保証明書の発行)
    • 英文CGL・PL保険(海外での賠償責任)
    • 外航貨物海上保険(輸出入貨物の輸送中・保管中)
    • 貿易保険
    • 取引信用保険(海外売掛債権の未回収リスク)
    • 海外リコール保険
    • 海外拠点を含むサイバー保険
    • グローバル保険プログラム(海外子会社を含む保険の一元管理)

    取扱保険会社:AIG損害保険、Chubb損害保険、スター保険会社

    保有資格

    • 損害保険トータルプランナー(日本損害保険協会)
    • 貿易実務検定

    対応実績

    これまでに、次のような先からご相談をいただいています。

    • 東証プライム上場企業
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    英語対応

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