自社は輸出していないのに、海外で訴えられる?|部品・素材メーカーの海外PL保険と、取引先から求められる備え

最終更新:2026年10月30日

「うちは国内の取引先に納めているだけで、輸出はしていない」。部品や素材のメーカーから、よく伺う言葉です。

ところが、納めた部品が完成品に組み込まれて海外で売られ、その製品で事故が起きると、完成品メーカーだけでなく、部品のメーカーまで訴えの相手に加えられることがあります。特にアメリカでは、事故の原因に関わった可能性のある会社を、まとめて訴えるのが一般的です。

さらに近年は、完成品メーカーや海外の取引先から、部品・素材メーカーにも保険への加入や保険の証明を求める場面が年々増えています。当センターに寄せられるご相談でも、「取引先から急に保険の証明を求められた」という声が多くなっています。

この記事では、部品・素材メーカーが海外の賠償責任を負う仕組みと、国内のPL保険では足りない場面、海外PL保険での備え方を解説します。

1. 輸出していなくても、海外で責任を問われる仕組み

  • 完成品メーカーを通じて、自社の部品が海外に出ていく流れ(間接輸出)があります
  • 海外の被害者は、完成品メーカー・販売店・部品メーカーをまとめて訴えることができます
  • 自社に責任がないと分かっても、訴えに応じる弁護士費用はかかります
  • 完成品メーカーが訴えられた後、部品が原因だとして、部品メーカーに負担を求めてくる(求償)こともあります

2. 国内のPL保険で足りない3つの場面

① 海外での事故が補償の対象外になっている
国内のPL保険は、日本国内で起きた事故を対象にしていることが多く、海外の事故は対象外か、特約を付けた場合だけ対象になります。

② 海外の訴訟の費用に限度額が足りない
海外、特に北米の訴訟は、弁護士費用だけで高額になりやすく、国内向けの限度額では足りないことがあります。

③ 取引先が求める保険の条件を満たせない
完成品メーカーから、海外での事故も対象にした保険への加入や、取引先自身を被保険者に加えることを求められる場合があります。

3. 自社の部品が海外に出ているかを確かめる

  • 取引先の完成品は、どの国で売られているか
  • 取引先との契約書や品質保証の取り決めに、賠償や保険の条項があるか
  • 取引先から保険の加入状況を聞かれたことがあるか

分からない場合は、取引先の海外売上や販売先の国を確認するところから始めます。

4. 海外PL保険での備え方

  • 対象地域:完成品が売られている国(北米を含むかどうかで保険料が大きく変わります)
  • 支払限度額:取引先から指定があればその額以上。北米向けは高めに考えます
  • 訴訟費用の扱い:限度額の内側で払われるか、外側で別に払われるか
  • 契約で引き受けている賠償責任:完成品メーカーとの契約の補償条項が対象になるか
  • 保険の証明:取引先から求められたら、英文の保険証明(COI)を出せるか

契約で引き受けた賠償責任の考え方は、契約で引き受ける賠償責任(Contractual Liability)の引受けと、早めの準備で詳しく解説しています。

5. 取引先から保険の加入や証明を求められたら

海外の取引先が仕入れ先に保険の加入を求める動きは、年々強まっています。製品事故の賠償が高額になりやすいこと、取引先自身が自分の取引先や保険会社から、仕入れ先の保険の確認を求められていることが背景にあります。これまで何も言われなかった取引でも、契約の更新や新しい案件をきっかけに、条件として求められることがあります。

完成品メーカーが海外の販売先から保険の証明を求められ、その条件が部品メーカーにも回ってくることがあります。条件書や依頼のメールをそのままお送りいただければ、条件を満たす契約と証明をお手配します。

→ 取引先からPL保険の証明書を求められたら

6. 見積りに必要な情報

  • 部品・素材の種類と用途(何の完成品に使われるか)
  • 納入先(完成品メーカー)と、完成品が売られている国・地域
  • 年間の売上(そのうち海外に出ていく分の見込み)
  • 取引先から求められている条件(条件書・メールがあればそのまま)
  • 今入っている保険(国内PL、海外特約、団体制度など)

7. 当センターがお手伝いした例

  • 機械部品メーカー(東南アジア向け):国内のPL保険の延長でご相談をいただき、海外での事故も対象になる契約に組み直しました。

8. よくある質問

Q. 直接輸出していなくても、海外PL保険に入れますか?
A. 入れます。完成品として海外に出ていく部品・素材も対象にできます。完成品が売られている国と、海外に出ていく分の売上の見込みを伺って組み立てます。

Q. 完成品メーカーが保険に入っていれば、部品メーカーは不要ですか?
A. 完成品メーカーの保険は、完成品メーカー自身を守るものです。部品メーカーが訴えられたときや、完成品メーカーから負担を求められたときに、部品メーカーの費用を払ってくれるとは限りません。

Q. 部品の不具合でリコールになった場合も出ますか?
A. 製品の回収費用は、PL保険では対象外です。リコールの費用に備えるには、別の保険が必要です。

→ 海外PL保険とリコール保険の違い

9. お問い合わせ

部品・素材が海外に出ているか分からない段階でも、ご相談ください。取引先の条件書や依頼のメールがあれば、そのままお送りください。

→ お問い合わせフォーム

海外ビジネス保険センター(GBIC東京)は、株式会社BEAMリスクマネージの東京の事業所です。英文CGL、海外PL保険、E&O、英文の保険証明書(COI)の発行まで、企業の賠償責任保険を専門にご相談を承っています。

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  • このブログの記事は「若宮大志」が書きました。

    若宮大志

    平素、ご契約者様には弊社にて保険契約を賜り、誠にありがとうございます。また取引業者様におかれましても、弊社の業務運営において日頃多大なご支援をいただき感謝を申し上げます。

     さて昨今の大きな問題として、自然災害の増加、資源・物価高による保険金の増大、保険金の不正請求等にもより、お客様にお支払いいただく保険料の上昇が顕著となった1年間でした。また損保大手4社による企業カルテル問題では、大きなところでは政策保有株の原則禁止と表明されたり、小さな部分では他社証券の取得や満期更改情報の取得を制限すると表明されたりしましたが、実質的に保険業界の企業体質はなかなか変わらないことが危惧されます。また保険会社の営業職員や保険代理店社員がお客様の保険料を不正に流用したり、店主が顧客と結託し、保険金詐欺に加担していた事件も明るみとなりました。

     国も企業も、身を正すことができない大人たちが跋扈することによって、業界が成長しないばかりか市場における競争力が失われ続けていると感じます。それは国内のみならまだしも、グローバルで相対的に力を失っているのが一番大きな弊害だと感じるものです。

     私たち株式会社BEAMリスクマネージは、政府による指導や保険会社の改革を待つのではなく、高いレベルのコンプライアンス基準による業務遂行を通じ、日本を、世界をリードする最先端の保険コンサルティング会社を目指してまいります。引き続きのご指導、ご鞭撻のほど何卒宜しくお願い申し上げます。


    2024年12月吉日
    株式会社BEAMリスクマネージ
    代表取締役 若宮 大志

     

    プロフィール

    若宮 大志(わかみや たいし)
    株式会社BEAMリスクマネージ 代表取締役
    海外ビジネス保険センター(GBIC東京)責任者

    保険業界での実務経験は13年。うち8年を海外ビジネス保険に専従しています。

    AIG損害保険株式会社に在籍したのち、2020年5月に株式会社BEAMリスクマネージを設立。同年8月にAIG損害保険を退職し、独立しました。

    国内の法人保険を手がける中で、海外に事業を広げようとする中小企業が「英文の証券が用意できない」「主催者から届いた英文の要求が読み解けない」という理由で、商談や出展を止めてしまう場面に何度も立ち会いました。保険が事業の足かせになっている——この状況を変えたいと考え、海外ビジネス保険に専門特化しています。

    現在も、AIG損害保険をはじめChubb損害保険、スター保険会社など、海外リスクの引受に強い保険会社を取り扱っています。

    専門領域

    • 海外展示会保険(主催者指定要件への対応、英文付保証明書の発行)
    • 英文CGL・PL保険(海外での賠償責任)
    • 外航貨物海上保険(輸出入貨物の輸送中・保管中)
    • 貿易保険
    • 取引信用保険(海外売掛債権の未回収リスク)
    • 海外リコール保険
    • 海外拠点を含むサイバー保険
    • グローバル保険プログラム(海外子会社を含む保険の一元管理)

    取扱保険会社:AIG損害保険、Chubb損害保険、スター保険会社

    保有資格

    • 損害保険トータルプランナー(日本損害保険協会)
    • 貿易実務検定

    対応実績

    独立以来の累計で、次の実績があります。

    • 海外展開を支援した企業(累計) …… 約150社
    • 海外展示会の保険手配(累計) …… 約180件
    • 対応した国・地域 …… 22カ国

    海外展示会の保険手配では、主催者が求める補償項目・補償限度額・追加被保険者(Additional Insured)の記載要件を確認したうえで保険を設計し、英文付保証明書(COI)を発行しています。

    英語対応

    英文証券および英文付保証明書(COI)の発行に対応しています。

    主催者から届く英文の出展要項を読み解き、「Commercial General Liability USD 1,000,000」「Additional Insured」「Waiver of Subrogation」といった要求条件が日本のどの保険に対応するのかを確認したうえで手配します。

    出展要項をそのままお送りいただければ、こちらで内容を確認します。

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