ヨーロッパの展示会の保険|パリ・フランクフルトの出展規約で求められる条件と準備

パリ、フランクフルト、ミラノなど、ヨーロッパの展示会への出展が決まると、出展規約の中に保険の条件が書かれていることがあります。アメリカの展示会と同じつもりで準備すると、求められる金額や項目が違い、証明書を出し直すことになりかねません。

この記事では、ヨーロッパの展示会の出展規約で実際に求められている保険の条件を例に、日本から出展する企業が確認しておくことを、保険代理店の立場から整理します。

要点は3つです。

  • ヨーロッパの展示会は、出展規約で賠償責任保険への加入を義務づけていることが多い
  • 人や物への賠償に加えて、借りた会場やレンタル品への損害、求償権の放棄まで指定されることがある
  • 保険の条件は国と展示会ごとに違う。規約の保険の項目を、そのまま読み合わせるのが一番の近道

1. ヨーロッパの展示会は、規約で保険を求める

ヨーロッパの大きな展示会では、主催者が出展規約(Conditions of Participation/Règlement/Regolamento など)を公開しています。その中に保険の条項があり、出展者に賠償責任保険への加入を義務づけていることがよくあります。

規約で求められるのは、おもに次のような内容です。

  • 会期中(設営・撤去を含む)に、来場者や他の出展者にケガをさせた、物を壊したときの賠償責任
  • 借りた会場(建物・床・設備)への損害
  • 借りた機材・什器・ブースの備品(レンタル品)の破損や盗難
  • 主催者や会場に対して、保険会社が損害の求償をしない約束(求償権の放棄)
  • 保険の証明書の提出と、その期限

主催者は、出展者が起こした事故の責任を負わないと規約に定めていることが多く、事故の賠償は出展者自身の保険で払うことが前提になっています。

2. 出展規約の実例(パリ・フランクフルト)

実際に公開されている規約から、保険の条件を2つ紹介します。いずれも各展示会が公開している資料にもとづきます。条件は回ごとに変わることがあるため、出展する回の規約で必ず確認してください。

パリの展示会の例(JEC World 2023 の出展者向け資料)

  • 出展者は、自社の費用で賠償責任保険に加入する。主催者は出展者の賠償責任の保険を用意しない
  • 対象は、会期中(設営・撤去を含む)に第三者や会場の運営者・所有者に与えた身体・物・経済的な損害
  • 支払限度額は、損害の種類を問わず700万ユーロ以上、物と経済的な損害で300万ユーロ以上
  • 借りた会場への損害(risques locatifs)は、1事故300万ユーロ以上
  • 保険は、フランスで認可を受け、フランスで保険の取引ができる保険会社のものであること
  • 会場や主催者への求償権を放棄すること
  • 登録の確定時に、保険会社名・保険の内容・金額・期間を記した証明書を求められることがある

フランクフルトの展示会の例(Eurobike 2027 の一般出展条件)

  • 出展者は、一般的な水準の支払限度額で賠償責任保険に加入する義務がある
  • 借りた建物・会場への火災・爆発・水濡れの損害を、1,000万ユーロ以上で補償すること
  • その他の借りた物(レンタル品など)への損害を、5万ユーロ以上で補償すること
  • 保険に入っていることの証明を、開幕の3週間前までに書面で出すこと

どちらも、人や物への賠償だけでなく、借りた会場やレンタル品への損害まで金額を指定しているのが特徴です。パリの例では、さらに求償権の放棄と、現地で認可を受けた保険会社であることも条件になっています。

3. アメリカの展示会との違い

アメリカの展示会では、主催者や会場を追加被保険者(Additional Insured)に入れた英文の証明書(COI)を求められることが多く、条件は証明書の書き方に集まります。

ヨーロッパの展示会では、次の点で違いが出やすくなります。

項目 ヨーロッパの展示会で多いこと
支払限度額 ユーロ建てで指定される。損害の種類ごとに金額が分かれていることがある
借りた会場・レンタル品 建物への火災・水濡れや、借りた物への損害に、別の金額を指定されることがある
求償権の放棄 主催者・会場への求償をしない旨(Waiver of Subrogation)を求められる
保険会社の条件 現地で認可を受けた保険会社であることを求める規約がある
規約の言語 英語のほか、フランス語・ドイツ語・イタリア語などの規約しかないことがある

求償権の放棄(Waiver of Subrogation)や追加被保険者の意味は、Additional Insured・Waiver of Subrogationとは|英文COIの要求文に出る用語集で説明しています。

4. 出展前に確認すること

規約の保険の項目と、いま入っている保険(または手配する保険)を、次の順に読み合わせます。

  1. 対象地域にヨーロッパが入っているか:国内の賠償責任保険では、海外の展示会での事故が対象外のことがあります
  2. 支払限度額が規約の金額以上か:損害の種類ごとに金額が分かれている場合は、それぞれを確認します
  3. 借りた会場・レンタル品への損害が入っているか:一般的な賠償責任保険では、借りた物への損害が対象外になっていることがあります
  4. 求償権の放棄に対応できるか:規約の文言どおりに、主催者や会場を対象にできるかを確認します
  5. 保険会社の条件に合うか:現地で認可を受けた保険会社を求める規約の場合、日本の保険の証明書だけでは条件を満たさないことがあります
  6. 証明書の期限・言語・名義:提出期限、英語での発行、規約どおりの出展者名になっているかを確認します

国によっては、その国にある会社やリスクについて、現地で認可された保険会社で入ることを法律で求めています。くわしくは付保規制(自国保険主義)とはをご覧ください。

5. 当センターでお手伝いできること

当センターでは、海外展示会・国際学会に出展する企業の保険を手配しています。ヨーロッパの展示会についても、次のご相談を承っています。

  • 会期中(設営・撤去を含む)の賠償責任保険の手配
  • 借りた機材・什器・ブースの備品(レンタル品)の破損や盗難への備え
  • 規約に合わせた英文の保険証明(COI)の発行と、主催者からの差し戻しへの対応

なお、自社の展示品(出展物)そのものの破損・盗難の補償は、当センターではお引き受けしていません。

ご相談の際は、出展規約の保険の項目(英語・フランス語・ドイツ語など、届いたままで構いません)、展示会名、会期、会場、出展者の正式名称をお送りください。規約に「現地で認可を受けた保険会社」とある場合は、最初にお知らせください。証明書の提出期限が迫っている場合は、お電話でご連絡ください。

→ 海外展示会の保険
→ 英文付保証明書(COI)発行
→ お問い合わせフォーム

6. よくある質問

Q. 規約がフランス語やドイツ語しかありません。
A. 届いたままお送りください。保険の項目を読み、何が求められているかを整理してお伝えします。

Q. いつまでに準備すればよいですか?
A. 規約の証明書の提出期限から逆算します。フランクフルトの例のように「開幕の3週間前まで」と決まっている展示会もあります。出展が決まったら、規約が届いた時点でご相談ください。準備の流れは海外展示会の保険|いつから準備する?で説明しています。

Q. 国際学会の展示でも同じですか?
A. 学会でも、主催者が保険の条件を示していることがあります。考え方は国際学会に出展するときの保険|海外展示会と何が違うかをご覧ください。

Q. ヨーロッパで製品を販売する予定もあります。
A. 展示会の賠償責任とは別に、販売した製品の事故に備える海外PL保険が必要になります。2026年12月9日からEUの製造物責任のルールが変わるため、EUの製造物責任が2026年12月9日から変わる|輸出企業が海外PL保険で確認することもあわせてご覧ください。

7. 関連ページ

→ 海外展示会の保険
→ 英文付保証明書(COI)|要求文に書かれている条件を実例で解説
→ 海外展示会保険Q&A|初めての海外出展でよくある疑問
→ 付保規制(自国保険主義)とは|海外の保険を日本で入るか、現地で調達するか

※ 規約の内容は、各展示会が公開している資料(JEC World 2023 の出展者向け資料、Eurobike 2027 の一般出展条件)にもとづく例です。出展する回の最新の規約を、各主催者でご確認ください。
※ この記事は補償の考え方を一般的に説明したものです。実際の補償内容は、保険会社の約款・特約、ご契約の条件によって異なります。

  • このブログの記事は「若宮大志」が書きました。

    若宮大志

    平素、ご契約者様には弊社にて保険契約を賜り、誠にありがとうございます。また取引業者様におかれましても、弊社の業務運営において日頃多大なご支援をいただき感謝を申し上げます。

     さて昨今の大きな問題として、自然災害の増加、資源・物価高による保険金の増大、保険金の不正請求等にもより、お客様にお支払いいただく保険料の上昇が顕著となった1年間でした。また損保大手4社による企業カルテル問題では、大きなところでは政策保有株の原則禁止と表明されたり、小さな部分では他社証券の取得や満期更改情報の取得を制限すると表明されたりしましたが、実質的に保険業界の企業体質はなかなか変わらないことが危惧されます。また保険会社の営業職員や保険代理店社員がお客様の保険料を不正に流用したり、店主が顧客と結託し、保険金詐欺に加担していた事件も明るみとなりました。

     国も企業も、身を正すことができない大人たちが跋扈することによって、業界が成長しないばかりか市場における競争力が失われ続けていると感じます。それは国内のみならまだしも、グローバルで相対的に力を失っているのが一番大きな弊害だと感じるものです。

     私たち株式会社BEAMリスクマネージは、政府による指導や保険会社の改革を待つのではなく、高いレベルのコンプライアンス基準による業務遂行を通じ、日本を、世界をリードする最先端の保険コンサルティング会社を目指してまいります。引き続きのご指導、ご鞭撻のほど何卒宜しくお願い申し上げます。


    2024年12月吉日
    株式会社BEAMリスクマネージ
    代表取締役 若宮 大志

     

    プロフィール

    若宮 大志(わかみや たいし)
    株式会社BEAMリスクマネージ 代表取締役
    海外ビジネス保険センター(GBIC東京)責任者

    保険業界での実務経験は13年。うち8年を海外ビジネス保険に専従しています。

    AIG損害保険株式会社に在籍したのち、2020年5月に株式会社BEAMリスクマネージを設立。同年8月にAIG損害保険を退職し、独立しました。

    国内の法人保険を手がける中で、海外に事業を広げようとする中小企業が「英文の証券が用意できない」「主催者から届いた英文の要求が読み解けない」という理由で、商談や出展を止めてしまう場面に何度も立ち会いました。保険が事業の足かせになっている——この状況を変えたいと考え、海外ビジネス保険に専門特化しています。

    現在も、AIG損害保険をはじめChubb損害保険、スター保険会社など、海外リスクの引受に強い保険会社を取り扱っています。

    専門領域

    • 海外展示会保険(主催者指定要件への対応、英文付保証明書の発行)
    • 英文CGL・PL保険(海外での賠償責任)
    • 外航貨物海上保険(輸出入貨物の輸送中・保管中)
    • 貿易保険
    • 取引信用保険(海外売掛債権の未回収リスク)
    • 海外リコール保険
    • 海外拠点を含むサイバー保険
    • グローバル保険プログラム(海外子会社を含む保険の一元管理)

    取扱保険会社:AIG損害保険、Chubb損害保険、スター保険会社

    保有資格

    • 損害保険トータルプランナー(日本損害保険協会)
    • 貿易実務検定

    対応実績

    独立以来の累計で、次の実績があります。

    • 海外展開を支援した企業(累計) …… 約150社
    • 海外展示会の保険手配(累計) …… 約180件
    • 対応した国・地域 …… 22カ国

    海外展示会の保険手配では、主催者が求める補償項目・補償限度額・追加被保険者(Additional Insured)の記載要件を確認したうえで保険を設計し、英文付保証明書(COI)を発行しています。

    英語対応

    英文証券および英文付保証明書(COI)の発行に対応しています。

    主催者から届く英文の出展要項を読み解き、「Commercial General Liability USD 1,000,000」「Additional Insured」「Waiver of Subrogation」といった要求条件が日本のどの保険に対応するのかを確認したうえで手配します。

    出展要項をそのままお送りいただければ、こちらで内容を確認します。

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    海外ビジネス保険センター(GBIC東京)
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