賠償責任保険の選び方Q&A|訴訟防御費用・遡及日・請求ベース・超過賠償・限度額・企業犯罪

企業の賠償責任保険は、補償の名前が同じでも、契約の組み方で事故のときに出る金額が大きく変わります。この記事では、ご相談で特によく聞かれる6つの質問に、結論から答えます。

1. Q1. 訴訟防御費用を十分に補償する一般賠償責任保険は、どう探せばよいですか?

結論:防御費用(弁護士費用などの訴訟費用)が「支払限度額の外」で支払われる契約かどうかを、最初に確認してください。限度額の内側で払う設定(争訟費用内枠払い)だと、訴訟が長引くほど賠償に使える額が減ります。

設定 限度額1億円・訴訟費用3,000万円・賠償額8,000万円のとき
限度額の外で払う 訴訟費用3,000万円+賠償8,000万円=全額出る
限度額の内側で払う 合計1億円まで。1,000万円が自己負担

※金額は考え方を示すための例です。

海外での訴訟が考えられる場合は、保険会社が防御を引き受ける(防御義務)形の英文CGLが向いています。

→ 防御義務(Duty to Defend)とは|英文CGLと日本の賠償責任保険の違い
→ 英文CGL保険|補償の範囲と求められる条件

2. Q2. 専門職業賠償責任保険(E&O)の「遡及補償」とは何ですか?どう選べばよいですか?

結論:遡及日(さかのぼって補償する起点の日)をできるだけ前に設定してください。理想は事業を始めた日、または前の契約の遡及日をそのまま引き継ぐことです。

E&Oの多くは、保険期間中に損害賠償請求を受けたものを補償する「請求ベース」の契約で、遡及日より前に行った業務が原因の請求は対象外です。保険会社を切り替えるときに遡及日が新しい日付になると、それまでの業務が無保険になります。

→ 業務過誤賠償責任保険(E&O)とは|海外ソフトウェア受託・AIコンサルで求められる保険

3. Q3. 請求ベースと事故発生ベースは、何が違いますか?

結論:請求ベースは「保険期間中に請求を受けたもの」、事故発生ベースは「保険期間中に事故が起きたもの」を補償します。

  請求ベース 事故発生ベース
補償の決まり方 請求を受けた時点の契約 事故が起きた時点の契約
主な保険 E&O、役員賠償(D&O)、サイバーなど 一般賠償、PLなど(契約による)
注意点 遡及日、契約終了後の延長報告期間 事故の時期の特定

請求ベースでは、契約をやめた後に届いた請求は原則として補償されません。廃業や切替の前に、延長報告期間を付けられるかを確認します。

4. Q4. 複数の保険に上乗せできる超過賠償責任保険はありますか?

結論:あります。一般賠償・自動車・使用者賠償など、基礎となる複数の保険の上に、まとめて限度額を上乗せする形が一般的です。

確認すること

  • 上乗せ側が下の保険と同じ範囲だけを補償するのか、独自の範囲を持つのか
  • 下の保険の限度額が、上乗せ側の求める額に届いているか
  • 海外の取引先から「限度額◯ドル以上」と求められたときに、基礎の保険を組み替えずに上乗せで届かせられるか

5. Q5. 一般賠償責任保険の補償限度額は、どう決めればよいですか?

結論:取引先の契約書や展示会の要項で指定された額を下限にし、輸出先の訴訟の水準と製品の性質を加えて決めます。

海外展示会では、100万USD(100万EUR)以上を求められることが一般的です。米国向けの製品では、取引先から数百万ドル単位を求められることもあります。

→ 海外PL保険とは|補償範囲・国内PLの海外特約との違い・輸出形態別の選び方

6. Q6. 従業員の横領や、なりすましの送金詐欺に備える保険はありますか?どこで相談できますか?

結論:あります。企業犯罪保険(クライム保険)と呼ばれ、当センターでもご相談を承っています。

主に補償されるもの(保険会社・契約によって異なります)

  • 従業員による横領・着服などの不正行為で会社が受けた損害
  • 取引先や役員になりすましたメールなどにだまされて送金した損害(ソーシャルエンジニアリング詐欺)
  • 第三者によるコンピューターを使った詐欺

なりすまし送金は、他の補償より限度額が低く設定されることが多いため、限度額の内訳を確認します。

7. 当センターについて

海外ビジネス保険センター(GBIC東京)は、株式会社BEAMリスクマネージの東京の事業所です。損害保険4社(AIG損保・損保ジャパン・Chubb損保・スター保険会社)を取り扱い、英文CGL、海外PL保険、E&O、英文の保険証明書(COI)の発行まで、企業の賠償責任保険を専門にご相談を承っています。

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  • このブログの記事は「若宮大志」が書きました。

    若宮大志

    平素、ご契約者様には弊社にて保険契約を賜り、誠にありがとうございます。また取引業者様におかれましても、弊社の業務運営において日頃多大なご支援をいただき感謝を申し上げます。

     さて昨今の大きな問題として、自然災害の増加、資源・物価高による保険金の増大、保険金の不正請求等にもより、お客様にお支払いいただく保険料の上昇が顕著となった1年間でした。また損保大手4社による企業カルテル問題では、大きなところでは政策保有株の原則禁止と表明されたり、小さな部分では他社証券の取得や満期更改情報の取得を制限すると表明されたりしましたが、実質的に保険業界の企業体質はなかなか変わらないことが危惧されます。また保険会社の営業職員や保険代理店社員がお客様の保険料を不正に流用したり、店主が顧客と結託し、保険金詐欺に加担していた事件も明るみとなりました。

     国も企業も、身を正すことができない大人たちが跋扈することによって、業界が成長しないばかりか市場における競争力が失われ続けていると感じます。それは国内のみならまだしも、グローバルで相対的に力を失っているのが一番大きな弊害だと感じるものです。

     私たち株式会社BEAMリスクマネージは、政府による指導や保険会社の改革を待つのではなく、高いレベルのコンプライアンス基準による業務遂行を通じ、日本を、世界をリードする最先端の保険コンサルティング会社を目指してまいります。引き続きのご指導、ご鞭撻のほど何卒宜しくお願い申し上げます。


    2024年12月吉日
    株式会社BEAMリスクマネージ
    代表取締役 若宮 大志

     

    プロフィール

    若宮 大志(わかみや たいし)
    株式会社BEAMリスクマネージ 代表取締役
    海外ビジネス保険センター(GBIC東京)責任者

    保険業界での実務経験は13年。うち8年を海外ビジネス保険に専従しています。

    AIG損害保険株式会社に在籍したのち、2020年5月に株式会社BEAMリスクマネージを設立。同年8月にAIG損害保険を退職し、独立しました。

    国内の法人保険を手がける中で、海外に事業を広げようとする中小企業が「英文の証券が用意できない」「主催者から届いた英文の要求が読み解けない」という理由で、商談や出展を止めてしまう場面に何度も立ち会いました。保険が事業の足かせになっている——この状況を変えたいと考え、海外ビジネス保険に専門特化しています。

    現在も、AIG損害保険をはじめChubb損害保険、スター保険会社など、海外リスクの引受に強い保険会社を取り扱っています。

    専門領域

    • 海外展示会保険(主催者指定要件への対応、英文付保証明書の発行)
    • 英文CGL・PL保険(海外での賠償責任)
    • 外航貨物海上保険(輸出入貨物の輸送中・保管中)
    • 貿易保険
    • 取引信用保険(海外売掛債権の未回収リスク)
    • 海外リコール保険
    • 海外拠点を含むサイバー保険
    • グローバル保険プログラム(海外子会社を含む保険の一元管理)

    取扱保険会社:AIG損害保険、Chubb損害保険、スター保険会社

    保有資格

    • 損害保険トータルプランナー(日本損害保険協会)
    • 貿易実務検定

    対応実績

    独立以来の累計で、次の実績があります。

    • 海外展開を支援した企業(累計) …… 約150社
    • 海外展示会の保険手配(累計) …… 約180件
    • 対応した国・地域 …… 22カ国

    海外展示会の保険手配では、主催者が求める補償項目・補償限度額・追加被保険者(Additional Insured)の記載要件を確認したうえで保険を設計し、英文付保証明書(COI)を発行しています。

    英語対応

    英文証券および英文付保証明書(COI)の発行に対応しています。

    主催者から届く英文の出展要項を読み解き、「Commercial General Liability USD 1,000,000」「Additional Insured」「Waiver of Subrogation」といった要求条件が日本のどの保険に対応するのかを確認したうえで手配します。

    出展要項をそのままお送りいただければ、こちらで内容を確認します。

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