海外子会社のサイバー保険|本社でまとめて手配する方法と、現地の保険で足りない部分の埋め方

海外に子会社や工場、販売拠点を持つ企業では、サイバー事故は日本の本社だけの話ではありません。ランサムウェアや不正アクセスは、セキュリティの手薄な海外拠点から入り込み、グループ全体のシステムを止めることがあります。

ところが、海外拠点のサイバー保険は「現地に任せている」「入っているかどうか本社は知らない」という会社が少なくありません。この記事では、海外拠点を含めたサイバー保険を本社でまとめて手配する方法を解説します。

要点は3つです。

  • 海外拠点の加入状況と中身を、本社が把握していないことが多い
  • 本社の保険(マスター)と現地の保険(ローカル)を組み合わせると、グループ全体で同じ水準の補償にそろえられる
  • 国によっては現地の保険会社で入る必要があり(付保規制)、組み方に注意がいる

1. 海外拠点のサイバー事故は、本社の問題になる

トレンドマイクロの集計では、2025年にランサムウェアのリークサイトに掲載された日本関連の組織は96件で、この中には海外子会社・海外拠点も含まれています。(出典:トレンドマイクロ「2025年 法人組織のサイバーリスクを総括」)

海外拠点が被害を受けると、次のようなことが起きます。

  • グループ共通の基幹システムや受発注が止まり、日本の本社の事業も止まる
  • 現地の顧客や取引先の情報が漏れ、現地の法律にもとづく通知・報告・賠償が必要になる
  • 事故対応の窓口がばらばらで、初動が遅れる

事故のとき、誰が最初に動くか決まっているか

海外拠点で事故が起きたとき、現地の保険会社に連絡するのか、本社に連絡するのか、決まっていない会社が多くあります。最初の数日の対応(調査会社の手配、システムの切り離し、関係先への連絡)で被害の大きさが変わります。

2. よくある「現地任せ」の3つの問題

入っているかどうかを本社が知らない

国ごとに子会社が独自に保険を手配していると、どの国が入っていて、どの国が入っていないかを本社が把握できません。

国ごとに補償の中身がばらばら

同じグループでも、ある国は賠償だけ、ある国は事故対応費用だけ、限度額も国ごとに違う、ということが起きます。グループ全体で見ると、守れていない国が残ります。

保険会社が国ごとに違い、事故対応がつながらない

国ごとに保険会社が違うと、親会社と子会社の両方が巻き込まれる大きな事故のとき、どの保険で何を払うかの整理に時間がかかります。

3. 本社でまとめる方法:マスターとローカルの組み合わせ

海外拠点を含めた保険を本社でまとめるときは、日本の本社が契約する保険(マスターポリシー)と、各国の子会社が現地で契約する保険(ローカルポリシー)を組み合わせます。

仕組み 内容
ローカルポリシー 各国の子会社が現地で契約。事故のときは原則こちらが先に支払う
条件差(DIC:Difference in Conditions) 現地の保険では対象外の損害を、マスターの範囲で補う
限度額差(DIL:Difference in Limits) 現地の保険の限度額を超えた部分を、マスターで補う

ローカルの内容を最低限にとどめ、足りない部分をマスターで補うことで、グループ全体で同じ水準の補償にそろえられます。補償の重なりや漏れが減り、保険料の全体像も本社で把握できます。

保険会社をそろえると、事故のときの連絡先が一つになる

マスターとローカルを同じ保険グループでそろえると、事故のときの連絡先がはっきりし、各国の事故対応の体制をつないで使えます。

4. 注意点:国によっては現地の保険で入る必要がある(付保規制)

国によっては、その国にある会社やリスクについて、現地で認められた保険会社の保険に入ることを法律で求めています(付保規制、自国保険主義)。こうした国では、日本の本社の保険だけで海外子会社をカバーすることができず、ローカルポリシーが必要です。また、日本の保険から現地へ直接保険金を払えない場合もあります。

どの国に拠点があるかで組み方が変わるため、最初に拠点の一覧を作ることが大切です。

→ 付保規制(自国保険主義)とは|海外の保険を日本で入るか、現地で調達するか

5. 見積に必要な情報

  • 国ごとの売上高
  • 海外子会社の名称・所在地
  • 現地の連絡先(担当者名・メールアドレスなど)
  • 本社と各拠点のシステムのつながり方、セキュリティ対策の状況(所定の質問書)
  • 現在入っている保険の内容(入っている国だけでも可)

※国によっては、別に所定の質問書が必要になります。

6. よくある質問

Q. 日本のサイバー保険に入っていれば、海外子会社も補償されますか?

A. 契約によります。海外子会社を被保険者に含めていない、または付保規制がある国では、日本の保険だけでは補償されないことがあります。

Q. 海外子会社がすでに現地で入っている保険は、やめる必要がありますか?

A. 必ずしもやめる必要はありません。現地の保険を生かしたまま、足りない部分を本社の保険で補う組み方もあります。

Q. 拠点が1〜2か国だけでも、まとめる意味はありますか?

A. あります。拠点が少ないうちに組み方を決めておくと、拠点が増えたときに同じ形で広げられます。

7. 当センターでの考え方

当センターは、海外の拠点ごとの保険を「入っているか」「何が補償されるか」から一覧にし、本社でまとめる組み方をご提案します。付保規制のある国、英文での手続きが必要な国もご相談ください。

→ お問い合わせフォーム

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  • このブログの記事は「若宮大志」が書きました。

    若宮大志

    平素、ご契約者様には弊社にて保険契約を賜り、誠にありがとうございます。また取引業者様におかれましても、弊社の業務運営において日頃多大なご支援をいただき感謝を申し上げます。

     さて昨今の大きな問題として、自然災害の増加、資源・物価高による保険金の増大、保険金の不正請求等にもより、お客様にお支払いいただく保険料の上昇が顕著となった1年間でした。また損保大手4社による企業カルテル問題では、大きなところでは政策保有株の原則禁止と表明されたり、小さな部分では他社証券の取得や満期更改情報の取得を制限すると表明されたりしましたが、実質的に保険業界の企業体質はなかなか変わらないことが危惧されます。また保険会社の営業職員や保険代理店社員がお客様の保険料を不正に流用したり、店主が顧客と結託し、保険金詐欺に加担していた事件も明るみとなりました。

     国も企業も、身を正すことができない大人たちが跋扈することによって、業界が成長しないばかりか市場における競争力が失われ続けていると感じます。それは国内のみならまだしも、グローバルで相対的に力を失っているのが一番大きな弊害だと感じるものです。

     私たち株式会社BEAMリスクマネージは、政府による指導や保険会社の改革を待つのではなく、高いレベルのコンプライアンス基準による業務遂行を通じ、日本を、世界をリードする最先端の保険コンサルティング会社を目指してまいります。引き続きのご指導、ご鞭撻のほど何卒宜しくお願い申し上げます。


    2024年12月吉日
    株式会社BEAMリスクマネージ
    代表取締役 若宮 大志

     

    プロフィール

    若宮 大志(わかみや たいし)
    株式会社BEAMリスクマネージ 代表取締役
    海外ビジネス保険センター(GBIC東京)責任者

    保険業界での実務経験は13年。うち8年を海外ビジネス保険に専従しています。

    AIG損害保険株式会社に在籍したのち、2020年5月に株式会社BEAMリスクマネージを設立。同年8月にAIG損害保険を退職し、独立しました。

    国内の法人保険を手がける中で、海外に事業を広げようとする中小企業が「英文の証券が用意できない」「主催者から届いた英文の要求が読み解けない」という理由で、商談や出展を止めてしまう場面に何度も立ち会いました。保険が事業の足かせになっている——この状況を変えたいと考え、海外ビジネス保険に専門特化しています。

    現在も、AIG損害保険をはじめChubb損害保険、スター保険会社など、海外リスクの引受に強い保険会社を取り扱っています。

    専門領域

    • 海外展示会保険(主催者指定要件への対応、英文付保証明書の発行)
    • 英文CGL・PL保険(海外での賠償責任)
    • 外航貨物海上保険(輸出入貨物の輸送中・保管中)
    • 貿易保険
    • 取引信用保険(海外売掛債権の未回収リスク)
    • 海外リコール保険
    • 海外拠点を含むサイバー保険
    • グローバル保険プログラム(海外子会社を含む保険の一元管理)

    取扱保険会社:AIG損害保険、Chubb損害保険、スター保険会社

    保有資格

    • 損害保険トータルプランナー(日本損害保険協会)
    • 貿易実務検定

    対応実績

    独立以来の累計で、次の実績があります。

    • 海外展開を支援した企業(累計) …… 約150社
    • 海外展示会の保険手配(累計) …… 約180件
    • 対応した国・地域 …… 22カ国

    海外展示会の保険手配では、主催者が求める補償項目・補償限度額・追加被保険者(Additional Insured)の記載要件を確認したうえで保険を設計し、英文付保証明書(COI)を発行しています。

    英語対応

    英文証券および英文付保証明書(COI)の発行に対応しています。

    主催者から届く英文の出展要項を読み解き、「Commercial General Liability USD 1,000,000」「Additional Insured」「Waiver of Subrogation」といった要求条件が日本のどの保険に対応するのかを確認したうえで手配します。

    出展要項をそのままお送りいただければ、こちらで内容を確認します。

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