EUの製造物責任が2026年12月9日から変わる|輸出企業が海外PL保険で確認すること

ヨーロッパへ製品を輸出している、またはこれから販売を始める企業にとって、2026年12月9日は覚えておきたい日付です。EUの製造物責任のルールが、約40年ぶりに全面的に改められます。

この記事では、何が変わるのか、そして海外PL保険の契約で何を確認しておけばよいのかを、保険代理店の立場から整理します。法律の解釈そのものは、現地の弁護士にご確認ください。

1. 何が変わるのか

1985年から使われてきたEUの製造物責任指令に代わり、新しい指令(指令2024/2853)が2024年12月8日に発効しました。EU加盟国は2026年12月9日までに、これを自国の法律に取り込みます。

新しいルールが適用されるのは、2026年12月9日以降にEU域内で販売された、または使用が始まった製品です。それより前に出荷・販売された製品には、従来のルールが適用されます。

主な変更点は次のとおりです。

1. ソフトウェアも「製品」になる

機器に組み込まれたソフトウェアだけでなく、単体で販売されるソフトウェアや、インターネット経由で提供されるサービス型のソフトウェアも対象になります。アップデートの不備やセキュリティの欠陥が、製品の欠陥として扱われる可能性があります。

2. 責任を問われる事業者が広がる

製造者がEUの外にいる場合でも、被害者が責任を問える相手として、輸入者、EU域内の代理人、フルフィルメント(保管・発送の代行)事業者などが挙げられています。オンラインのマーケットプレイスも、販売の関わり方によっては対象になります。

日本のメーカーにとっては、「自社は日本にいるから関係ない」とは言い切れなくなります。現地の輸入者や販売店から、契約や保険で責任の分担を求められる場面が増えると考えられます。

3. 被害者が欠陥を証明しやすくなる

裁判所が、製品について企業が持っている資料の開示を命じることができるようになります。また、技術的に複雑で被害者が証明に大きな困難を抱える場合には、欠陥や因果関係が推定されることがあります。

4. 請求できる期間

損害を知ってから3年、製品が販売・使用開始されてから10年が原則です。症状が遅れて出る身体の被害については、25年まで延びます。

2. 海外PL保険で確認しておきたいこと

ルールが変わっても、保険の契約が自動で追いつくわけではありません。ヨーロッパ向けの販売がある企業は、次の点を確認しておくと安心です。

① 補償の対象地域にヨーロッパが入っているか

海外PL保険は、対象地域を「日本を除く全世界」とするものもあれば、地域を絞るものもあります。北米向けだけを想定して契約していると、ヨーロッパでの事故が対象外になっていることがあります。

② 対象製品にソフトウェアが含まれているか

機器に組み込まれたソフトウェアや、製品と一緒に提供しているアプリ・クラウドサービスが、保険の「対象となる生産物」に入っているかを確認します。ソフトウェアの不具合による損害は、PL保険ではなく、業務過誤(E&O)の保険で備える領域になることもあります。

③ 輸入者や販売店を追加被保険者にできるか

現地の輸入者・販売店から、自社の保険で相手方も守るよう求められることがあります。追加被保険者(Additional Insured)として加えられるか、英文の付保証明書(COI)を出せるかを、あらかじめ確認しておくと手配が早く進みます。

④ 支払限度額と、防御費用の扱い

訴訟になった場合の弁護士費用などが、支払限度額の内側で払われるのか、外側で別に払われるのかは、契約によって異なります。証拠開示への対応で費用がかさむことも考えられます。

⑤ 保険期間と「いつの事故が対象か」

請求できる期間が長いため、何年も前に販売した製品について請求を受けることがあります。事故の発生時を基準にする契約か、請求を受けた時を基準にする契約かで、備え方が変わります。

3. 当センターでのご相談例

当センターでは、ヨーロッパや北米へ製品を輸出する企業から、海外PL保険のご相談をいただいています。これまでに、酒類のヨーロッパ・北米向け輸出や、鍵製品の北米・ヨーロッパ向け販売などのお手配をしてきました。

同じ製品でも、販売先の国や販売の形(直接輸出か、商社経由か、海外の通販サイトか)によって、必要な補償と保険料は大きく変わります。

4. まとめ

  • EUの新しい製造物責任指令は、2026年12月9日以降にEUで販売・使用開始される製品に適用されます
  • ソフトウェアも製品に含まれ、輸入者や物流代行事業者なども責任を問われうるようになります
  • 海外PL保険では、対象地域、ソフトウェアの扱い、追加被保険者、支払限度額、保険期間の考え方を確認しておきましょう

ヨーロッパ向けの販売があり、今の保険で足りているか確認したい場合は、海外PL保険のページからご相談ください。

→ 海外PL保険|輸出製品の賠償責任と取引先への保険証明

5. 関連ページ

出典:Hogan Lovells「EU introduces comprehensive digital-era Product Liability Directive」/Reed Smith「EU Product Liability Directive: software, digital products and cybersecurity」(2025年7月)

  • このブログの記事は「若宮大志」が書きました。

    若宮大志

    平素、ご契約者様には弊社にて保険契約を賜り、誠にありがとうございます。また取引業者様におかれましても、弊社の業務運営において日頃多大なご支援をいただき感謝を申し上げます。

     さて昨今の大きな問題として、自然災害の増加、資源・物価高による保険金の増大、保険金の不正請求等にもより、お客様にお支払いいただく保険料の上昇が顕著となった1年間でした。また損保大手4社による企業カルテル問題では、大きなところでは政策保有株の原則禁止と表明されたり、小さな部分では他社証券の取得や満期更改情報の取得を制限すると表明されたりしましたが、実質的に保険業界の企業体質はなかなか変わらないことが危惧されます。また保険会社の営業職員や保険代理店社員がお客様の保険料を不正に流用したり、店主が顧客と結託し、保険金詐欺に加担していた事件も明るみとなりました。

     国も企業も、身を正すことができない大人たちが跋扈することによって、業界が成長しないばかりか市場における競争力が失われ続けていると感じます。それは国内のみならまだしも、グローバルで相対的に力を失っているのが一番大きな弊害だと感じるものです。

     私たち株式会社BEAMリスクマネージは、政府による指導や保険会社の改革を待つのではなく、高いレベルのコンプライアンス基準による業務遂行を通じ、日本を、世界をリードする最先端の保険コンサルティング会社を目指してまいります。引き続きのご指導、ご鞭撻のほど何卒宜しくお願い申し上げます。


    2024年12月吉日
    株式会社BEAMリスクマネージ
    代表取締役 若宮 大志

     

    プロフィール

    若宮 大志(わかみや たいし)
    株式会社BEAMリスクマネージ 代表取締役
    海外ビジネス保険センター(GBIC東京)責任者

    保険業界での実務経験は13年。うち8年を海外ビジネス保険に専従しています。

    AIG損害保険株式会社に在籍したのち、2020年5月に株式会社BEAMリスクマネージを設立。同年8月にAIG損害保険を退職し、独立しました。

    国内の法人保険を手がける中で、海外に事業を広げようとする中小企業が「英文の証券が用意できない」「主催者から届いた英文の要求が読み解けない」という理由で、商談や出展を止めてしまう場面に何度も立ち会いました。保険が事業の足かせになっている——この状況を変えたいと考え、海外ビジネス保険に専門特化しています。

    現在も、AIG損害保険をはじめChubb損害保険、スター保険会社など、海外リスクの引受に強い保険会社を取り扱っています。

    専門領域

    • 海外展示会保険(主催者指定要件への対応、英文付保証明書の発行)
    • 英文CGL・PL保険(海外での賠償責任)
    • 外航貨物海上保険(輸出入貨物の輸送中・保管中)
    • 貿易保険
    • 取引信用保険(海外売掛債権の未回収リスク)
    • 海外リコール保険
    • 海外拠点を含むサイバー保険
    • グローバル保険プログラム(海外子会社を含む保険の一元管理)

    取扱保険会社:AIG損害保険、Chubb損害保険、スター保険会社

    保有資格

    • 損害保険トータルプランナー(日本損害保険協会)
    • 貿易実務検定

    対応実績

    独立以来の累計で、次の実績があります。

    • 海外展開を支援した企業(累計) …… 約150社
    • 海外展示会の保険手配(累計) …… 約180件
    • 対応した国・地域 …… 22カ国

    海外展示会の保険手配では、主催者が求める補償項目・補償限度額・追加被保険者(Additional Insured)の記載要件を確認したうえで保険を設計し、英文付保証明書(COI)を発行しています。

    英語対応

    英文証券および英文付保証明書(COI)の発行に対応しています。

    主催者から届く英文の出展要項を読み解き、「Commercial General Liability USD 1,000,000」「Additional Insured」「Waiver of Subrogation」といった要求条件が日本のどの保険に対応するのかを確認したうえで手配します。

    出展要項をそのままお送りいただければ、こちらで内容を確認します。

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