越境ECのPL保険|Amazon・Walmart・自社サイトで海外に売るときの入り方と、見積に必要なもの

Amazon.comやWalmart、Shopifyなどで作った自社サイトを使って、海外の消費者へ直接製品を売る企業が増えています。売り先が海外の個人になると、製品の事故が起きたときの賠償の請求も、海外から直接届くことになります。

この記事では、越境ECで備えるPL保険(生産物賠償責任保険)の考え方と、通販サイトが求める保険の条件、実際に加入するまでの流れと見積に必要な情報を、保険代理店の立場から整理します。

1. 越境ECで、国内のPL保険では足りない理由

国内向けのPL保険は、日本国内で起きた事故を対象にしている契約が多くあります。海外向けの特約を付けている場合も、対象の国や支払限度額に制限があることがあります。

越境ECには、輸出とは違う特徴があります。

  • 売り先の国が広がりやすい:アメリカ向けのつもりで出品していても、カナダやヨーロッパから注文が入ることがあります
  • 相手が海外の個人:間に商社や現地の販売店が入らないため、事故の請求が販売者に直接届きます
  • 販売者として責任を問われる:製品の事故では、製造者だけでなく、販売した事業者も請求の相手になりえます

そのため、「今の保険で海外の事故が対象になっているか」「販売している国がすべて入っているか」を、まず確認しておく必要があります。

2. 通販サイトが求める保険の条件

Walmart Marketplace

Walmartは、アメリカ国内と海外の出品者に対して、任意の12か月の流通総額(GMV)が10万ドルを超えた場合、またはWalmartから直接通知があった場合に、保険の証明書(COI)の提出を求めています。条件は次のとおりです。

  • 一般賠償責任とPL(生産物賠償責任)の支払限度額が、1事故100万ドル/保険期間中の合計200万ドル以上
  • 被保険者の名義が、Seller Centerに登録している正式な事業者名と一致していること
  • Walmart Inc.(とその子会社・関連会社)を追加被保険者に入れること

証明書が条件を満たさないと手続きが止まり、保険が切れたままだとアカウントの停止や、注文・支払いの保留につながることがあります。

Amazon.com

Amazon.comは、2026年11月2日から保険の要件を広げます。子ども向け製品や化粧品、口に入る製品、リチウム電池を含む製品など、安全要件が強化されたカテゴリーは、売上の額に関係なく、100万ドル以上の賠償責任保険が必要になります。詳しくは米国Amazonで販売する企業のPL保険の記事で解説しています。

自社サイト(Shopifyなど)での直販

通販サイトの審査がないため、保険の条件を求められることはありません。その分、加入するかどうかの判断と、事故が起きたときの対応は、すべて自社に委ねられます。

そのほかの通販サイト

保険の要件は通販サイトごとに異なり、変わることもあります。出品している通販サイトの規約を確認したうえで、条件を満たす契約を組み立てます。なお、通販サイトの要件にかからない場合でも、製品の事故による請求は、売上の大小と関係なく届きます。

3. 越境ECのPL保険で確認すること

① 対象地域に、販売している国がすべて入っているか

「日本を除く全世界」とする契約もあれば、地域を絞る契約もあります。通販サイトで配送先を広げたときは、保険の対象地域も見直します。

② 支払限度額が、通販サイトの条件以上か

WalmartやAmazon.comのように、限度額が指定されている場合は、その額以上で組みます。アメリカ向けの販売がある場合は、訴訟の費用もかさむため、高めに考えます。

③ 追加被保険者と、英文の保険証明(COI)を出せるか

通販サイトを追加被保険者として入れ、指定どおりの名義・記載で英文の証明書を出せるかを、手配の前に確認します。英文の証明書については英文付保証明書(COI)のページで詳しく説明しています。

④ 対象製品に、販売している製品がすべて入っているか

取扱製品を増やしたときは、保険会社への申告が必要になることがあります。新しいカテゴリーの出品を始める前にご相談ください。

⑤ 訴訟の費用が、限度額の内側か外側か

訴訟になったときの弁護士費用などが、支払限度額の内側で払われるのか、外側で別に払われるのかは、契約によって異なります。アメリカでの賠償の考え方は輸出PL保険と懲罰的損害賠償の記事をご覧ください。

4. 加入までの流れ

  1. ご相談:フォームまたはお電話でご連絡ください
  2. 販売状況の確認:製品、販売先の国、売上、使っている通販サイト、求められている条件を伺います
  3. 補償の組み立てとお見積り:通販サイトの条件を満たす内容でお見積りします
  4. お申し込み
  5. 保険証券と英文の保険証明(COI)の発行:通販サイトの管理画面から提出します

通販サイトから提出の期限を示されている場合は、最初のご相談のときにお知らせください。期限から逆算して進めます。

5. 見積に必要な情報

次の情報がそろうと、お見積りが早く進みます。分かる範囲で大丈夫です。

  • 販売している製品の種類と用途(商品ページのURLでも構いません)
  • 販売先の国・地域と、国ごとの売上(見込み)
  • 使っている通販サイト(Amazon.com、Walmart、自社サイトなど)
  • 通販サイトから届いている保険の案内(メールや画面の写し)
  • 事業者の正式な名称(通販サイトの登録名義と同じもの)
  • 今入っている保険(国内のPL保険など)
  • これまでの製品の事故やクレームの有無

6. よくあるご質問

売上が小さくても、入る必要はありますか

通販サイトの要件は、売上の額や商品のカテゴリーで決まることがあります。要件にかからない場合でも、製品の事故による請求は、売上の大小と関係なく届きます。販売している製品と国を伺って、必要な補償を一緒に確認します。

個人事業主でも入れますか

ご相談ください。事業の形と販売の状況を伺って、お手配できるかを確認します。

今入っている国内のPL保険で、越境ECの事故は補償されますか

契約によります。海外での事故が対象外になっていることや、海外向けの特約があっても対象の国や限度額に制限があることがあります。今の保険証券を拝見して確認します。

通販サイトの指定する書式で、保険の証明を出せますか

通販サイトの条件(名義、限度額、追加被保険者など)を拝見したうえで、条件を満たす契約と英文の証明書をお手配します。

7. まとめ

  • 越境ECでは、製品の事故の請求が海外の消費者から販売者に直接届きます
  • Walmartは流通額10万ドル超の出品者に、1事故100万ドル/合計200万ドル以上の保険と、Walmartを追加被保険者に入れた証明書を求めています
  • Amazon.comは2026年11月2日から、安全要件が強化されたカテゴリーで、売上に関係なく保険が必要になります
  • 対象地域、支払限度額、追加被保険者と英文の証明、対象製品、訴訟費用の扱いを確認しましょう

当センターでも、Amazonなど海外の通販サイトで販売する企業からのご相談をいただいています。越境ECで販売していて、今の保険で足りているか確認したい場合は、海外PL保険のページからご相談ください。

→ 海外PL保険の見積・加入|輸出製品の賠償責任と取引先への保険証明

関連ページ

出典:Walmart Marketplace Learn「Liability insurance policy」(2025年12月12日更新)。通販サイトの要件は変わることがあります。最新の内容は各通販サイトでご確認ください。

  • このブログの記事は「若宮大志」が書きました。

    若宮大志

    平素、ご契約者様には弊社にて保険契約を賜り、誠にありがとうございます。また取引業者様におかれましても、弊社の業務運営において日頃多大なご支援をいただき感謝を申し上げます。

     さて昨今の大きな問題として、自然災害の増加、資源・物価高による保険金の増大、保険金の不正請求等にもより、お客様にお支払いいただく保険料の上昇が顕著となった1年間でした。また損保大手4社による企業カルテル問題では、大きなところでは政策保有株の原則禁止と表明されたり、小さな部分では他社証券の取得や満期更改情報の取得を制限すると表明されたりしましたが、実質的に保険業界の企業体質はなかなか変わらないことが危惧されます。また保険会社の営業職員や保険代理店社員がお客様の保険料を不正に流用したり、店主が顧客と結託し、保険金詐欺に加担していた事件も明るみとなりました。

     国も企業も、身を正すことができない大人たちが跋扈することによって、業界が成長しないばかりか市場における競争力が失われ続けていると感じます。それは国内のみならまだしも、グローバルで相対的に力を失っているのが一番大きな弊害だと感じるものです。

     私たち株式会社BEAMリスクマネージは、政府による指導や保険会社の改革を待つのではなく、高いレベルのコンプライアンス基準による業務遂行を通じ、日本を、世界をリードする最先端の保険コンサルティング会社を目指してまいります。引き続きのご指導、ご鞭撻のほど何卒宜しくお願い申し上げます。


    2024年12月吉日
    株式会社BEAMリスクマネージ
    代表取締役 若宮 大志

     

    プロフィール

    若宮 大志(わかみや たいし)
    株式会社BEAMリスクマネージ 代表取締役
    海外ビジネス保険センター(GBIC東京)責任者

    保険業界での実務経験は13年。うち8年を海外ビジネス保険に専従しています。

    AIG損害保険株式会社に在籍したのち、2020年5月に株式会社BEAMリスクマネージを設立。同年8月にAIG損害保険を退職し、独立しました。

    国内の法人保険を手がける中で、海外に事業を広げようとする中小企業が「英文の証券が用意できない」「主催者から届いた英文の要求が読み解けない」という理由で、商談や出展を止めてしまう場面に何度も立ち会いました。保険が事業の足かせになっている——この状況を変えたいと考え、海外ビジネス保険に専門特化しています。

    現在も、AIG損害保険をはじめChubb損害保険、スター保険会社など、海外リスクの引受に強い保険会社を取り扱っています。

    専門領域

    • 海外展示会保険(主催者指定要件への対応、英文付保証明書の発行)
    • 英文CGL・PL保険(海外での賠償責任)
    • 外航貨物海上保険(輸出入貨物の輸送中・保管中)
    • 貿易保険
    • 取引信用保険(海外売掛債権の未回収リスク)
    • 海外リコール保険
    • 海外拠点を含むサイバー保険
    • グローバル保険プログラム(海外子会社を含む保険の一元管理)

    取扱保険会社:AIG損害保険、Chubb損害保険、スター保険会社

    保有資格

    • 損害保険トータルプランナー(日本損害保険協会)
    • 貿易実務検定

    対応実績

    独立以来の累計で、次の実績があります。

    • 海外展開を支援した企業(累計) …… 約150社
    • 海外展示会の保険手配(累計) …… 約180件
    • 対応した国・地域 …… 22カ国

    海外展示会の保険手配では、主催者が求める補償項目・補償限度額・追加被保険者(Additional Insured)の記載要件を確認したうえで保険を設計し、英文付保証明書(COI)を発行しています。

    英語対応

    英文証券および英文付保証明書(COI)の発行に対応しています。

    主催者から届く英文の出展要項を読み解き、「Commercial General Liability USD 1,000,000」「Additional Insured」「Waiver of Subrogation」といった要求条件が日本のどの保険に対応するのかを確認したうえで手配します。

    出展要項をそのままお送りいただければ、こちらで内容を確認します。

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