国際学会に出展するときの保険|海外展示会と何が違うか
海外の国際学会にブースを出すことが決まると、主催者から英文の賠償責任保険と、その付保証明書(COI)の提出を求められることがあります。
展示会については調べれば情報が出てきますが、学会の話はあまり出てきません。学会も展示会と同じでよいのか、という段階でご相談をいただくことがあります。
結論から申し上げると、求められる保険の中身そのものは、展示会と大きくは変わりません。違うのは主催者の構造と時間の使い方です。この記事では、その2点を中心にご説明します。
1. 海外の国際学会でも、保険の提出を求められます
海外の国際学会に出展する場合、出展者マニュアルや参加要項に保険に関する条項が置かれていることがあります。求められる内容は、海外展示会の場合とほぼ同じです。
具体的には、事業活動にともなう対人・対物の賠償責任を補償する英文の賠償責任保険(Commercial General Liability、以下CGL)に加入し、その加入内容を英文で証明した書類を提出してください、という形になります。この証明書が英文付保証明書(COI)です。
順番としては、保険が先で、証明書は後です。「証明書を出してください」と言われたときに最初に確認すべきなのは、書式ではなく、どの保険をどんな条件で用意する必要があるのか、という点になります。
保険そのものの中身については英文CGL保険|補償の範囲と求められる条件で詳しくご説明しています。
2. 学会と展示会は、主催者の構造が違います
ここが、学会でつまずきやすい点です。
海外展示会の場合、主催しているのは見本市の主催会社で、そこに会場の運営者が加わる形が一般的です。関係する組織は比較的はっきりしています。
一方、国際学会の場合は、学術団体そのものが主催者でありながら、実務の運営は事務局や運営を受託した会社が担っていることがあります。会場も別の運営者です。つまり、1つのイベントに関係する組織が増えやすいという構造になります。
| 項目 | 海外展示会 | 国際学会 |
| 主催 | 見本市の主催会社 | 学術団体(学会本体) |
| 実務の窓口 | 主催会社の出展者担当 | 学会事務局、運営受託会社など |
| 会場 | 会場運営者 | 会場運営者 |
| 保険への影響 | 追加被保険者の指定は比較的少ない | 追加被保険者が複数指定されやすい |
この構造の違いが、そのまま次の項目に効いてきます。
追加被保険者(Additional Insured)とは、契約者本人のほかに、その保険の被保険者として証券に記載される相手のことです。出展者の活動が原因で誰かに損害を与えたとき、そこに巻き込まれる可能性がある組織を、あらかじめ同じ保険の傘の下に入れておく、という考え方です。
ですから、関係する組織が多い学会では、指定される追加被保険者も自然と増えます。ここを1つでも落とすと、要求された条件を満たしていないことになり、証明書が受け付けられません。
3. 実例:追加被保険者が3者指定されていた学会
当社が実際に受け取った要求文の例です。2026年9月にソウルで開催される、ある国際学会の出展者マニュアルには、追加被保険者(Additional Insured)として次の3者を記載するよう指定されていました。
・学会事務局
・学会本体
・会場運営者
海外展示会であれば、主催者と会場運営者の2者、あるいは主催者のみという指定も珍しくありません。学会では、ここに学会本体と事務局が分かれて入ってきます。
差し戻しの原因として多いのが、主催者だけを記載して、事務局と会場運営者を落としてしまうという取り違えです。要求文を読み飛ばして起きるというよりも、どこまでが指定の範囲なのかを読み取りきれずに起きます。
この学会の要求文には、追加被保険者のほかにも限度額や条項の指定が並んでいました。要求文の全体像については英文付保証明書(COI)|要求文に書かれている条件を実例で解説でご覧いただけます。
4. 提出期限が「開催の約2か月前」に設定されることがあります
同じソウルの学会の要求文では、提出期限が開催の約2か月前と定められていました。それ以降に出展が確定した場合は、搬入前までに提出すること、という書き方です。
海外展示会では搬入日の前まで、という設定も多いのですが、学会ではこのように早い時点に置かれることがあります。
そしてもう一点、押さえておきたいことがあります。実質的な締切は、開催日でも提出期限でもなく、保険の始期です。
差し戻しが起きた場合でも、保険の始期の前であれば修正や変更ができます。逆に、始期を過ぎてしまうと直せません。開催日まで日数があるように見えても、始期が搬入日以前に設定されていれば、そこが実質的な期限になります。
当社での英文付保証明書(COI)の発行は、主催者との条件照合を省略した場合で最短7営業日、照合を行う場合は10営業日程度が目安です。ここに、お客様側での申込書のご記入と保険料のお振込みの時間が加わります。
あわせて、補償の期間の設定にもご注意ください。要求文には「補償は会期を通じて有効であること」といった条件が書かれることがあります。会期だけを見て期間を設定すると、搬入日や搬出日が補償の外に出てしまうことがあります。
※日数はいずれも目安です。要求文の内容や保険会社の対応状況によって変わります。
5. 稟議に時間がかかる組織ほど、早く動く必要があります
国際学会に出展されるのは、大学、研究機関、医療機器や製薬に関わる企業など、決裁の段数が多い組織であることが少なくありません。
この場合、実際に時間を使うのは保険の手配そのものではなく、その前後にあります。
・出展が正式に決まり、出展者マニュアルが手元に届くまで
・保険の要否と費用について、社内の決裁を通すまで
・申込書のご記入と、保険料のお振込みの処理
出展者マニュアルが届いてから動き始めると、この3つが提出期限までに収まらないことがあります。出展の申込みをした時点で、保険の条件がどこに書かれているかだけでも確認しておかれることをおすすめします。
一方で、国際学会は年1回の開催で、日程と会場がかなり早い段階から公表されていることが多いという特徴もあります。出展の意思が固まった時点であれば、時間的な余裕は十分に取れます。
準備の時間の考え方については海外展示会の保険|いつから準備する?で詳しくご説明しています。学会の場合も考え方は同じです。
6. 発表のみで、ブースを出さない場合
口頭発表やポスター発表のみで、ブースを出さない場合に保険を求められるかどうかは、学会によって異なります。
参加要項に保険の記載が見当たらないこともあれば、出展者だけでなく参加者全体に条件が及んでいることもあります。ここはご自身で判断していただく必要はありません。
参加要項や案内をそのままお送りいただければ、保険の条項があるかどうかを含めて確認いたします。
7. よくあるご質問
Q. 学会でも、海外展示会と同じ保険でよいのですか
A. 求められる保険の種類そのものは、多くの場合CGL(賠償責任保険)で同じです。違うのは、限度額の水準や、追加被保険者として誰を記載するかといった条件のほうです。同じCGLでも、条件を満たしていなければ受け付けられません。
Q. 日本で加入している賠償責任保険の証券を英訳すれば足りますか
A. 足りないことがあります。海外の要求文には、日本の賠償責任保険にそもそも対応する項目がない条項が含まれていることがあるためです。その場合、日本の証券をどれだけ正確に英訳しても、要求された形にはなりません。
Q. 追加被保険者に指定された組織は、どのような立場になりますか
A. 契約者ご自身と同じように、その保険の被保険者として証券に記載されます。指定された組織を記載することが、主催者が保険を求める目的そのものである場合が多く、記載漏れは差し戻しの直接の原因になります。
Q. 提出したあとに差し戻された場合、直せますか
A. 保険の始期の前であれば、修正や変更ができます。始期を過ぎてしまうと直せません。差し戻しの連絡を受けたら、開催日までの日数ではなく、始期までの日数でご判断ください。
Q. ブースを出さず、発表だけの場合はどうなりますか
A. 学会によって異なります。参加要項をそのままお送りいただければ、保険の条項があるかどうかを含めて確認いたします。
8. 判断に迷ったら、要求文をそのままお送りください
要求文には細かい条件が並びます。ご自身で読み解いて、どれを満たす必要があるかを判断していただく必要はありません。
日本語に訳したり、関係がありそうな部分だけを抜き出したりせず、届いたものをそのままお送りください。抜き出す段階で、判断が必要になってしまうためです。
お送りいただきたいもの
・PDF
・スクリーンショット
・出展者マニュアルや参加要項そのもの
当社はこれまでに、海外展示会の保険を180件以上お手配してきました。2024年からは、海外案件で年間100件を超えるご相談をいただいています。
送り先
海外ビジネス保険センター(GBIC東京)
Email:gbic@beam-rm.jp
お急ぎの場合は、お電話でもご相談いただけます。
9. 関連ページ
・海外展示会保険|英文付保証明書(COI)発行
・英文付保証明書(COI)発行|主催者要件の読み解きと提出・差し戻し対応
・英文CGL保険|補償の範囲と求められる条件
・海外展示会の保険|いつから準備する?
・英文付保証明書(COI)|要求文に書かれている条件を実例で解説
※この記事は補償の概要をご説明したものです。実際に補償される範囲は、ご契約いただく保険会社の約款および証券の記載によります。個別の条件については、お問い合わせの際にご確認ください。
