機械・装置メーカーの海外PL保険|輸出した装置の事故で問われる責任と、据付・保守まで含めた備え方

最終更新:2026年11月3日

機械・装置メーカーの海外PL保険とは、輸出した機械や装置の欠陥で、海外の使用者がけがをしたり工場の設備が壊れたりしたときに、メーカーが負う損害賠償金と、海外での訴訟に対応する費用に備える保険です。

海外の販売代理店やユーザーと取引を始めると、「PL保険に入っているか」「当社を追加被保険者にした保険証明を出してほしい」と求められます。据付や保守で現地に行く場合は、作業中の事故への備えも必要です。この記事では、機械・装置メーカーが確認しておきたい点を順に整理します。

1. 機械・装置の輸出で問われる3つの責任

輸出した機械や装置で海外の使用者がけがをしたり、工場の設備が壊れたりしたとき、メーカーが問われる責任は大きく3つに分かれます。

  • 設計の責任:安全装置が足りない、危険な部分に手が届く構造になっているなど、設計そのものに問題があったとされるもの
  • 製造の責任:溶接や組立の不良、部品の取り違えなど、その1台に限って不具合があったとされるもの
  • 警告・説明の責任:取扱説明書や警告ラベルが不十分だった、現地の言葉で書かれていなかったとされるもの

海外では、この3つめの「警告・説明」の責任が問われることが少なくありません。日本では十分と考えていた説明書でも、現地の基準では足りないと判断されることがあります。

2. 機械・装置で起こりやすい事故

  • 作業者が可動部に巻き込まれる、挟まれる
  • 制御の誤作動で、加工中の製品や周囲の設備が壊れる
  • 電気系統の不具合から火災が起き、工場の建物に燃え広がる
  • 部品が破損して飛散し、近くにいた人がけがをする

機械の事故は、1件の損害が大きくなりやすいのが特徴です。工場の建物や生産ラインの停止による損失まで請求されることもあり、支払限度額の決め方が重要になります。

3. 据付・試運転・保守で現地に行くなら、英文CGLも確認する

海外PL保険が対象とするのは、引き渡した製品が原因の事故です。装置の据付や試運転、定期保守のために技術者を現地に送る場合、作業中の事故(作業中に顧客の設備を壊した、来場者にけがをさせたなど)は、別の考え方になります。

現地での作業がある場合は、製品の事故と作業中の事故の両方を含めて備える英文CGL保険で組み立てることを検討します。発注者との契約書に、作業中の賠償責任保険の加入が条件として書かれていることも多くあります。

4. 販売代理店やユーザーから求められる条件

海外の販売代理店や大手のユーザーと取引を始めると、次のような保険の条件が届きます。

  • 1事故あたりの支払限度額(例:100万USD以上。北米向けはそれ以上を求められることもあります)
  • 販売代理店やユーザーを追加被保険者にすること
  • 英文の保険証明(COI)を、出荷前や契約前に提出すること
  • 契約書の補償条項(Indemnity/Hold Harmless)で、代理店が受けた請求までメーカーが負担すること

補償条項で引き受けた責任まで保険で受けられるかは、契約書の文言と保険の設定によって変わります。詳しくは契約で引き受ける賠償責任(Contractual Liability)の保険相談をご覧ください。

5. 輸出先の地域で変わること

北米:工場で事故にあった作業者が、雇用主ではなく機械のメーカーを訴えるケースが多い地域です。陪審による裁判や懲罰的損害賠償も問題になり、限度額は他の地域より高めに設定します。

ヨーロッパ:機械の安全に関する規制が厳しく、EUの製造物責任のルールも2026年12月9日から新しくなります。制御ソフトウェアを含む装置は、ソフトウェアの不具合まで製品の欠陥として扱われる点に注意が必要です。

アジア:国によっては、現地の保険会社で加入しなければならない決まり(付保規制)があります。日本から輸出した装置の事故は日本側の保険で、現地法人や工場の責任は現地で、と分けて組み立てることがあります。

6. お見積りに必要な情報

  • 機械・装置の種類と用途(カタログがあれば、そのまま)
  • 輸出先の国・地域と、年間の輸出額(見込みで構いません)
  • 販売の形(直接販売/販売代理店経由/完成品メーカーへの組込み)
  • 据付・試運転・保守で現地に行くかどうか
  • 取引先から届いている保険の条件や契約書(訳さずに原文のまま)
  • いま加入している国内のPL保険の証券

7. よくあるご質問

国内のPL保険の海外特約で足りませんか

対象の国や限度額に制限があることが多く、北米向けや、代理店を追加被保険者にする必要がある場合は足りないことがあります。証券を拝見して確認します。

中古の機械を輸出する場合も対象になりますか

ご相談ください。製造したメーカーではなく輸出者として責任を問われることがあり、製品の状態や販売先を伺って判断します。

装置に組み込んだ他社の部品が原因の事故はどうなりますか

最終的な装置のメーカーとして、まず請求を受けるのが一般的です。部品メーカーへの求償は別の話になるため、まずは自社に来た請求に備えておく必要があります。

8. まとめ

機械・装置メーカーの海外PL保険は、製品の事故に加えて、現地での作業、代理店から求められる条件、契約書の補償条項まで一緒に整理するのが近道です。海外PL保険の見積・加入のページから、取引先の条件書をそのままお送りください。あわせて海外PL保険とは、海外取引の保険もご覧ください。

  • このブログの記事は「若宮大志」が書きました。

    若宮大志

    平素、ご契約者様には弊社にて保険契約を賜り、誠にありがとうございます。また取引業者様におかれましても、弊社の業務運営において日頃多大なご支援をいただき感謝を申し上げます。

     さて昨今の大きな問題として、自然災害の増加、資源・物価高による保険金の増大、保険金の不正請求等にもより、お客様にお支払いいただく保険料の上昇が顕著となった1年間でした。また損保大手4社による企業カルテル問題では、大きなところでは政策保有株の原則禁止と表明されたり、小さな部分では他社証券の取得や満期更改情報の取得を制限すると表明されたりしましたが、実質的に保険業界の企業体質はなかなか変わらないことが危惧されます。また保険会社の営業職員や保険代理店社員がお客様の保険料を不正に流用したり、店主が顧客と結託し、保険金詐欺に加担していた事件も明るみとなりました。

     国も企業も、身を正すことができない大人たちが跋扈することによって、業界が成長しないばかりか市場における競争力が失われ続けていると感じます。それは国内のみならまだしも、グローバルで相対的に力を失っているのが一番大きな弊害だと感じるものです。

     私たち株式会社BEAMリスクマネージは、政府による指導や保険会社の改革を待つのではなく、高いレベルのコンプライアンス基準による業務遂行を通じ、日本を、世界をリードする最先端の保険コンサルティング会社を目指してまいります。引き続きのご指導、ご鞭撻のほど何卒宜しくお願い申し上げます。


    2024年12月吉日
    株式会社BEAMリスクマネージ
    代表取締役 若宮 大志

     

    プロフィール

    若宮 大志(わかみや たいし)
    株式会社BEAMリスクマネージ 代表取締役
    海外ビジネス保険センター(GBIC東京)責任者

    外資系保険会社勤務10年超を経て独立し、海外ビジネス保険を専門に扱っています。

    AIG損害保険株式会社に在籍したのち、2020年5月に株式会社BEAMリスクマネージを設立。同年8月にAIG損害保険を退職し、独立しました。

    国内の法人保険を手がける中で、海外に事業を広げようとする中小企業が「英文の証券が用意できない」「主催者から届いた英文の要求が読み解けない」という理由で、商談や出展を止めてしまう場面に何度も立ち会いました。保険が事業の足かせになっている——この状況を変えたいと考え、海外ビジネス保険に専門特化しています。

    現在も、AIG損害保険をはじめChubb損害保険、スター保険会社など、海外リスクの引受に強い保険会社を取り扱っています。

    専門領域

    • 海外展示会保険(主催者指定要件への対応、英文付保証明書の発行)
    • 英文CGL・PL保険(海外での賠償責任)
    • 外航貨物海上保険(輸出入貨物の輸送中・保管中)
    • 貿易保険
    • 取引信用保険(海外売掛債権の未回収リスク)
    • 海外リコール保険
    • 海外拠点を含むサイバー保険
    • グローバル保険プログラム(海外子会社を含む保険の一元管理)

    取扱保険会社:AIG損害保険、Chubb損害保険、スター保険会社

    保有資格

    • 損害保険トータルプランナー(日本損害保険協会)
    • 貿易実務検定

    対応実績

    これまでに、次のような先からご相談をいただいています。

    • 東証プライム上場企業
    • 大手グループの子会社
    • 大学・国立研究機関・学会
    • 海外へ販路を広げる中小企業・メーカー

    2026年10月、ジェトロ(日本貿易振興機構)Webサイトの「JS LINKS」に掲載されました。

    海外展示会の保険手配では、主催者が求める補償項目・補償限度額・追加被保険者(Additional Insured)の記載要件を確認したうえで保険を設計し、英文付保証明書(COI)を発行しています。

    英語対応

    英文証券および英文付保証明書(COI)の発行に対応しています。

    主催者から届く英文の出展要項を読み解き、「Commercial General Liability USD 1,000,000」「Additional Insured」「Waiver of Subrogation」といった要求条件が日本のどの保険に対応するのかを確認したうえで手配します。

    出展要項をそのままお送りいただければ、こちらで内容を確認します。

    メディア・発信

    お問い合わせ

    海外ビジネス保険センター(GBIC東京)
    〒150-0043 東京都渋谷区道玄坂1丁目10番8号 渋谷道玄坂東急ビル2F-C
    TEL 03-4218-6981(平日 9:30〜18:00)
    Email gbic@beam-rm.jp

    予約する

あわせて読みたい記事